本場ジャマイカでダブが下火になった80年代以降、その可能性をUKで開花させたのがマッド・プロフェッサー、その人だった。南米のガイアナで55年に生まれた彼は、65年にロンドンへ移住。ガイアナ時代からジャマイカ音楽へ情熱を持っていたこともあり、10代後半になるとオーディオ・テクニシャンとしての仕事を得る。そこで培ったノウハウがアリワのスタジオ設立へと繋がっていくわけだ。アリワ設立後のマッドは、自身名義のブッ飛んだダブ作品を次々に連発。彼の代表作を多く含む〈Dub Me Crazy〉シリーズのほかにも、スティールパンが涼しげに響く85年作『A Carribean Taste Of Technology』(現在は廃盤)などの名盤も制作し、UK随一のダブ・マスターとしての名を欲しいままにする。また、ラヴァーズ作品で見せるメロウな手捌きや、リー・ペリーとのコラボレーションなどで聴かせたジャングル・スタイル、そして近年の『Dancehall Dub』まで続くユニークなダンスホール手法など、その引き出しの多さは非レゲエ・アーティストとの精力的な交流でも発揮されていくのだ。
なかでももっとも知られるのが、マッシヴ・アタック『No Protection』のダブ・ミックスを丸々担当したことだろう。今作で一気にその知名度を上昇させると、プライマル・スクリーム、ジャミロクワイ、デペッシュ・モード、オーブ、シャーデー、日本でも浜崎あゆみやDA PUMPからDUBSENSEMANIAまで、そしてトルコのババズーラやブラジルのマルセリーニョ・ダ・ルアなど、とにかく凄まじい量のリミックス/ダブ・ミックスを手掛けていくことになる。そんな彼の〈城〉、それがアリワなのだ!