III その後の流れと、現在の音楽シーンに見るソフト・ロックの影響力
不遇の70年代を過ごしたソフト・ロックだが、90年代に差し掛かると空前のブームが訪れる。それもここ日本でだ。別項で紹介されているロジャー・ニコルズの作品が世界で初めてCD化されたのをきっかけにソフト・ロック作品のCD化ブームが起こり(トラットリアがフリー・デザインの作品をリイシューしたりもした)、ほどなくしてピチカート・ファイヴやコーネリアスといった、いわゆる〈渋谷系〉のアーティストが大ブレイクを果たしたのである。彼らがソフト・ロックからの影響を公言し、そのサウンドを大々的に採り入れたことで、それらはハイセンスな音楽として一躍脚光を浴びたというわけだ。
その一方で、海外での再評価は遅れたが、それでもハイ・ラマズのようなバンドがソフト・ロックイズムを脈々と継承しているし、シカゴ音響派の鬼才、ジム・オルークも『Eureka』で同ジャンルの美しさを世に問うた。今年に入ってからも、元ジェリーフィッシュのロジャー・ジョセフ・マニングJrが徹底的にスタジオ・ワークにこだわった素晴らしいソロ・アルバムを発表するなど、ソフト・ロックの影響下にある作品を発見することはたやすい。また、昨年から良質な作品が相継いでリイシューされており、本格的なブーム再燃の予感がするのは気のせいだけではないはずだ。
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