D
DROOP-E:
巨漢のムスコはちっちゃく見えると言いますが、巨漢E-40の息子はこんなに大きくなっちゃって……。従兄弟のB・スリムと組んでアルバムを発表したドゥループ・Eは今年18歳になったばかり。2002年のクリスマスにE親父からスタジオ(!)をプレゼントされ……翌年には親父の作品に息子のビートが起用されています。でも、それが親バカじゃないのは聴けばわかりました。ターフ・トークやメッシー・マーヴらをプロデュースしたのに続き、全曲を手掛けた2005年のコンピ『The Bay Bridges Compilation Vol.1』でその実力は明白なものとなりました。若さゆえの無節操なハイブリッド感に溢れた彼のセンスは、ハイフィーすらすぐに更新しそうですよ。
▼ドゥループ・Eのプロデュース曲を含む作品。
E
E-40:
子供の頃から40オンス(安酒)をガブ飲みして作り上げた鯨のような巨体で知られるヴァレホの帝王。後にクリックを結成する弟妹らと共にマイクを握りはじめたのが85年……と、芸歴は20年を超えている。毒特の巻き舌で聴かせる〈スキャット&スクート〉流儀で誰にも模倣不能なヤバいラップを披露してきたが、全国区にその異才が認知されたのは最近のことだ。どんなビートでも乗りこなせるだけにハイフィー・ブームにも余裕で対応。なお、ブリトニーの夫=ケヴィン・フェダーラインの憧れの人だそう(マジで)。
E-40 『My Ghetto Report Card』 Sick Wid' It/BME/Reprise(2006)
全米チャートで初登場3位をマークしたキャリア史上最大のヒット作品。リル・ジョンにも食われない融合ぶりを見せつけ、キーク・ダ・スニークの奇っ怪なフロウがヤバい、ズンドコ異次元ハイフィー“Tell Me When To Go”も全米規模でヒット。ハイフィー・ムーヴメントを広く全米中に知らしめた一枚であり、本人の達者なフロウ、進化したビート群、豪勢なゲスト陣との絡みなど、すべてが凄まじい超重要作!
(池田)
F
FEDERATION:
ベイ最高のプロデューサーであるリック・ロックと共にコズミック・スロップ・ショップ(97年メジャー・デビュー)で活動していたドゥーニー・ベイビーが、若手のストレスマティック、ゴールディーと結成したトリオ。リックの完全バックアップを受けたデビュー曲、その名も“Hyphy”が地元で話題となってメジャー・デビューを果たす。アルバム『The Album』はセールス的に失敗してしまいましたが、今年に入って各方面で手の平を返したように再評価される機会が増えているようですね。そんなもんか。
FEDERATION 『The Album』 Virgin(2004)
現行ベイ・シーンを代表するトリオのウルトラ・ハイフィーな大傑作ファースト・アルバム!! リック・ロックのクリエイティヴィティーが炸裂した前年リリースの直球アンセム“Hyphy”や“Go Dumb”など、ハイフィーの何たるかを身体に教え込んでくれる新世紀のベイエリア・スタンダードだらけ。これを聴いて興奮しなかったら、このページは破って捨てていいよ!!
(出嶌)
H
HYPHY:
ヴァレホ~ベイエリアを中心に広まったスラングで、〈hyperactive〉を省略したもの。雰囲気的にはメチャメチャ激しく動き回る状態を指す形容詞ですね。リル・ジョンの〈クランク〉同様に、もともとは特定のサウンド・フォーマットを示す呼称ではないのですが、執拗なヴォーカル・サンプルやチープなシンセを反復したダイナミックなビートで聴く者を〈ハイフィー状態〉へ導くようなダンス・トラックを〈ハイフィー〉と通称しているわけですね。そうしたサウンドの源泉としてはリル・ジョンのクランク、そしてドクター・ドレーのハイファイなヒプノティック・ループが挙げられます。
HOODSTARZ 『Hood Reality』 Paradise/R Star(2006)
スコット・ドッグ(トータリー・インセイン)とバンド・エイド(ネヴァ・リーガル)が組んだデュオで、キーク・ダ・スニークをフィーチャーした“Can't Leave Rap Alone”が2004年にベイ・ヒットを記録。この初アルバムでも、ゲーム、トリルヴィル、リル・スクラッピーらと合体したギャングスタ・チューンやチープなハイフィーなど、エリア不問な格好良さに注目すべし。
(池田)