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第38回 ─ グループ・サウンズ

第38回 ─ グループ・サウンズ(4)

連載
Discographic  
公開
2004/12/16   13:00
更新
2004/12/16   17:19
ソース
『bounce』 260号(2004/11/25)
テキスト
文/醐樹 弦瑶

〈GS〉からもはみ出しまくった奇跡のバンド、ザ・ゴールデン・カップスのドキュメンタリー映画「ワンモアタイム」が完成!

 最先端の洋楽をいち早く吸収しオリジナルな料理法でカッコ良く披露する、そんな風にロック・バンドたちがしのぎを削り合っていた60年代後半、ニッポンでもっとも実力がありイチバンの本格派と称されていたザ・ゴールデン・カップス。

  メンバーは、リズム&ブルースを歌わせたら右に出るものがいない名ヴォーカリスト、リーダーのデイヴ平尾を始めとし、エディ藩(ギター)、ケネス伊東(ギター&ベース)、ルイズルイス加部(ベース&リード・ギター)、マモル・マヌ-(ドラムス)、ミッキー吉野(キーボード)という個性派たちで、67年6月に“いとしのジザベル”でレコード・デビュー。レコード会社に押し付けられて嫌々ながら作った“長い髪の少女”(GS歌謡の名作である)が大ヒットを記録したが、俺らの本質ここにあり、といったふうに、アルバムにおいてはヒップな洋楽カヴァーやオリジナル・ナンバーを披露した。

なぜこれほどまでに荒くれているのか?と思わずにはいられない、ファズ・サウンドが吹き荒れる初期ガレージ曲は、ここ最近のCDの再々発のおかげもあり(コンプリート収録のボックスまで出た)、若い人の間で再評価の動きが水飛沫状態。噛み付くようにワイルドなプレイの連続なのに最高のグルーヴを生み出しているバンド・アンサンブルのおもしろさが大いに受けている。また、GSの枠組みを取っ払って、Jロックの先駆者という正しい評価も定着しそうな雰囲気もある。

  ブルース・ロックに挑戦した『ブルース・メッセージ』やニュー・ロック的な『フィフス・ジェネレーション』といった名アルバムも残しており、いろんな角度から見つめることが可能なバンドなのである。今回『COMPLETE BEST BLUES OF LIFE』なるベスト盤がリリースされたのだが、カップスの尖った部分を抽出したような内容で、彼らの真実に触れるのに最適な一枚と仕上がっている(和製リズム&ブルースの傑作曲“にがい涙”も入れて欲しかったなぁ)。

 そんな彼らが、まずないだろうと思われていた驚きの再結成ライヴを昨年春に本牧で行なった。それだけに留まらず、今度はなんとドキュメンタリー映画「ワンモアタイム」までが届いてしまった(タイトルは彼らもレパートリーにしていたゼムの名バラードから取られている)。前半はメンバーや関係者、それに北野武や矢野顕子、忌野清志郎などへのインタヴューと古い記録フィルムをまとめたもの。カップスを通じて、当時の本牧~ハマの風景を浮かび上がらせてくれるのだが、これがめっぽうおもしろい。誰がどれほどのワルで、といった話や、“愛する君に”は名曲だ、とみんなで褒める部分には、観ながら頷いていた。そして後半は、先述の再結成ライヴの模様。こちらはライヴ盤としてもリリースされる(映画未収録曲も多数収録)。再結成アルバム? それはないみたい、さすがに。(桑原シロー)

〈カップス〉を知るための3枚 
『アルバム第2集』 東芝EMI(1968)

  オープニング、ジュニア・ウォーカー“Shotgun”のカヴァーがカッコ良すぎ! 初ヒット“長い髪の少女”のバタ臭さを振り払うかのように、リズム&ブルース・フィーリングを展開するセカンド・アルバム。ルイズルイス加部作“午前3時のハプニング”は奇蹟の一曲。

『ブルース・メッセージ』 東芝EMI(1969)

  ザ・ゴールデン・カップスのためにあるような一曲“本牧ブルース”で幕を開けるサード・アルバム。ポール・バターフィールドやキャンド・ヒートのカヴァーを収めるなど、メンバーが傾倒していたホワイト・ブルースのニュアンスを色濃く打ち出した野心作。

『フィフス・ジェネレーション』 東芝EMI(1971)

  一気にアメリカン・ロック化したラスト・アルバム。ザ・バンド“Tears Of Rage”のカヴァー以外は、全曲英語詞のオリジナル。曲によってリード・ヴォーカルを変えるなど(柳ジョージ、グー!)、さまざまなアイデアに満ちた本作は、もはやGSにあらず。(久保田泰平)