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第33回 ─ Jの刻印

OLDIES...BUT GOOD-BYE!

連載
Discographic  
公開
2004/09/24   12:00
更新
2004/09/24   18:20
ソース
『bounce』 257号(2004/8/25)
テキスト
文/能地 祐子

 日本のアイドル史を塗り替えたスーパー・ユニット〈たのきんトリオ〉の一員だった野村義男が「ギターを持ってデビューしたい」と、4人組バンド=THE GOOD-BYEを結成したのは83年のことだった。ほとんどのオリジナル曲を手掛けていたのは野村と、同じくリード・ヴォーカル&ギター担当だった曽我泰久とのコンビ。〈楽器を持ったアイドル・グループ〉で、しかも楽曲は自作……そんな彼らのスタイルは、当時のアイドルとしてはかなり〈型破り〉だった。が、THE GOOD-BYEがもっとも〈型破り〉だったのは、そういったスタイルよりむしろ、現在の音楽シーンにおける王道を先取りした高い音楽性そのものだった。90年の活動休止宣言までの7年間にリリースしたシングルは全15作、アルバムは全9作。いまあらためて当時の作品を聴くと、そこには80年代サウンドというよりも〈90年代J-Pop〉への予感が充ち満ちていたことに気付かされ、驚かされる。

 ハード・ロックからオールディーズまでを幅広く内包した柔軟なメロディー・センスと、冴えまくる抜群のハーモニー。はっぴいえんどにも通じる難度の高いコトバ遊びを、ティーンエイジャーの視点で奔放に体現する歌詞感覚のトキメキ。マニアをニヤリとさせる、ビートルズやビーチ・ボーイズ、ラズベリーズ、バッドフィンガー、モータウン、ELO、XTC、ジミヘン、さらにはキャロルやナイアガラ・サウンドまで……愛と尊敬をこめてサウンドの中に散りばめられた、ありとあらゆるオマージュの嵐。

「別にマニアックなことをやろうとは思っていなかった。ただ、もし気付いてくれる人がいたらいいな、気付いてくれるかな……というフレーズやコトバをあちこちに入れることは、最初から意識してやっていたよ」というのは、野村義男の弁。とはいえ、80年代当時はまだ、そんな思惑に〈気付く〉音楽ファンは少なかった。それらはいわば、後にスピッツやミスチルが〈90年代のバンド・サウンド〉として浸透させたポップス感覚や、フリッパーズ・ギターやL←→R以降の〈再発名盤CD世代〉ならではの無邪気なマニア精神に通じる心意気。ゆえに当時としては、まだまだ早すぎたのだ。その高い音楽性がアイドル・ファンのみならず広く音楽ファンの間で知れ渡るようになったのは、皮肉にも彼らが活動を休止した90年以降のことだった。

 ティーンエイジ・バンドの瑞々しさがポップに爆発する初期作品から、賛否両論を巻き起こした5作目のサイケデリック・アルバムを経て、作品を重ねるごとにポップ感覚の成熟と、バンドとしての成長を痛感させる後期作品まで……。その名場面を2枚組ベスト盤『READY! STEADY!! THE GOOD-BYE!!!』で経験するもよし、オリジナル・アルバムで〈早すぎたバンド〉のナゾをじっくり解くもよし。活動休止から15年。ポップス・ファンにとって、THE GOOD-BYEはこれからが〈旬〉なのかもしれない。