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第20回 ─ 田名網敬一×宇川直宏 濃密対談

第20回 ─ 田名網敬一×宇川直宏 濃密対談(2)

連載
NEW OPUSコラム
公開
2004/08/04   16:00
更新
2004/08/05   14:49
テキスト
文/村尾 泰郎

──そんななかで今回宇川さんが監修したライヴ・ペインティング〈ANIMACTIONS〉は、2人同時にペインティングにとりかかるものですよね。そもそも宇川さんはどういうふうに関わっていったんですか?


「ANIMACTIONS!!」映像より

宇川「お2人がライヴペインティングをやるってことは聞いてて。それでなんかおもしろい見せ方はないか、って相談を受けたんです。そこからアイデアを出していった。ライヴペインティングって、どう撮影しても現場の空気感にはかなわないじゃないですか。だからライヴの空気感をどう出すかだけにこだわろうと思って。で、よく考えたら2人ともアニメーターじゃないですか。だからそこに着目できないかなって思ったんです。アニメーションってアニメーターの描いた1フレームの絵が秒間25フレーム動くことによって、動いてるふうに見えるモノでしょ。でもライヴペインティングって逆で絵が止まってて作家が動く。それをアニメのコマ割りみたいな感じで表現できないかなって思いついたのが今回のやり方だったんです。だから〈ANIMACTIONS〉ってアニメーターの2人がアクションしながらみずからがアニメーションになって絵が止まってるって状態なんです」

──具体的にはどんな感じで?

宇川「まず左右から2人の先生が登場して、ヒトコマずつ絵のアウトラインだけ描いていくんですね。そして途中で交差した瞬間から、相手の絵に色を着けていくっていう仕組みになってるんです。さらにそこにまたアウトラインをプラスしていって、どんどん世界観を拡げていく。長い間コラボレートされてきて両先生の歴史ってあるじゃないですか。それを現場でみせられないかなっていうのが、ディレクションする側としてはすごくありましたね。だから2人ともお揃いの白の作業着とキャップを被ってもらって(笑)。あとキャンバスの上のほうを描くときに、届かない場所があるんですね。それ用に脚立を1台用意してたんです。2台じゃなくて1台だけ。それが重要かなって思って。つまり、その1台を2人がフレンドシップで譲りあうのか、もしくは奪い合って殴り合うのか(笑)」

──実際どうだったんですか?


「ANIMACTIONS!!」映像より

宇川「そりゃ譲り合いましたよ、もちろん(笑)。その譲り合いの波動みたいなものが観客に伝わったら、両先生の関係やコラボレーションの歴史みたいなものが見えるんじゃないかと。そういう演出も実は入ってるんですね。それに現場感っていうのも重要じゃないですか。観客のリアクションによっても現場の空気は変わってくる。当日MOODMANがリアルタイムでDJしていたんです。(キャンバスに)色が入ってきたらビートが入ってきたり、そういう呼吸がまた合うんですよね。だから音に反応して絵が変化した部分もあると思うし、そこに観客の波動も加わって現場の空気は流動的に変わっていく。そういった空気をうまく収録できないかなってのもありましたね。いつもは作家の意志で動いている画が、今度は逆に観客の意志で作家が動くっていう設定にできないかなって思ったんです」