MILLION DEAD 輝き始めた原石が持つ計り知れない可能性!!
UKのエモ~ポスト・ハードコア・シーンが、いまおもしろい。ハンドレッド・リーズンズ、ロストプロフェッツに続け!と言わんばかりにミリオン・デッド、フューネラル・フォー・ア・フレンド、シクスといったバンドがシーンを賑わせている。ひょっとすると……いや、すでにサーズデイら先駆者たちが手探りで磨き上げてきた表現方法が〈ポスト・ハードコア〉というひとつのスタイルとして定着してしまったアメリカのシーンよりも、まだ混沌としているぶん、現在のUKのシーンのほうが確実におもしろいバンドが出てきやすい状況にある。つまり、それだけ刺激に満ちているというわけだ。なかでもこのミリオン・デッドは、あの「KERRANG!」誌がレコード・デビュー前から〈必聴のバンド〉と謳い、〈ハンドレッド・リーズンズ÷アット・ザ・ドライヴ・イン+オーストラリア×政治=ミリオン・デッド〉(!?)とプッシュし続けてきた要注目の新人だ。
結成は2001年初頭。パンクを聴いて育ったフランク・ターナー(ヴォーカル)とベン・ドーソン(ドラムス)が、ヘヴィー・メタル世代のオーストラリア人、キャメロン・ディーン(ギター)とジュリア・ラジッカ(ベース)に出会い、「エネルギッシュで生々しくて、かつメロディアスなノイズを奏でよう!」とスタート。エネルギッシュなライヴの噂は、すぐにロンドンのみならずUK全土に浸透していった。そして2003年の夏、満を持して発表したデビュー・アルバム『A Song To Ruin』は、満点を与えた「KERRANG!」誌はもちろん、多くの音楽誌が興奮気味に絶賛した。〈破滅のための歌〉と題された全12曲。爆音の渦の中から、断末魔の叫びと美しいメロディーが浮かび上がるフリーキーなサウンドは、まさにカオスそのものだ。なにもかもが未完成。しかし、だからこそ、すでに出来上がってしまったバンドにはない無限の可能性が期待できる。このアルバムを初めて聴いたとき、アット・ザ・ドライヴ・インの初来日公演を観たときと同じ衝撃が走った。あのときアット・ザ・ドライヴ・インがそうだったように、いま、本当に求められているのは、こういうバンドなんじゃないだろうか?(山口智男)