ストロークス、ダークネスらの人気によって表舞台に出てきた、新生ラウド・ロック。ブリティッシュ・メタルの影響下で育った〈重音UKロック〉の動きを見逃すな!
LOSTPROPHETS シーンのパイオニアがニュー・アルバムを発表!!
「実際のところ、インディー・バンドがたくさんいるような状況かな? でもシーンが動き出していることは確かだね。メイン・ストリームのラジオでもかかりはじめているし。僕らと同じウェールズ出身のフューネラル・フォー・ア・フレンドとか知らない? すごくいいバンドなんだ」と語るのは、このたびセカンド・アルバム『Start Something』をリリースするロストプロフェッツのリー・ゲイズ(ギター:以下同)。本人たちはまだまだ自覚していないようだが、いままさに加速を始めたばかりのUKラウド・ロック・シーンを牽引しているのが彼らなのである。デビュー・アルバム『The Fake Sound Of Progress』が発表された2001年には、UKロック・シーンに多大な影響を及ぼす専門誌「KERRANG!」の〈ベスト・ニュー・ブリティッシュ・バンド〉賞を受賞。ほかにも「NME」誌をはじめとする各メディアが、彼らの登場を驚きと喜びをもって迎えた。〈UKスタイルのヘヴィー・ロック〉──新しいフォーマットを築いたパイオニアならではのプレッシャーが、このニュー・アルバム制作時にはあったのだろうか?
「それがさ、特にそういったことは感じなかったんだ。いつものように、スタジオでジャムってを6か月間続けただけ。もう前作のことは頭になかったし、実際それを上回る曲も書いていたからね」。
もともとバンド形態をとっている彼らにこんな表現もどうかと思うが、このアルバムはよりバンド然とした〈作り崩す〉感じに溢れている。「前作ではプロ・トゥールズを何曲かで使っていたんだけど、まるで機械の演奏みたいに聞こえるんだ」という反省をもとに、あえて今回は〈反パーフェクト〉を意識し、ほとんどをバンド・ケミストリーに任せたのだという。
「クリックを使わないと、高揚してテンポが早くなってしまう。けれどプロデューサーのエリック・ヴァレンタイン(これまでクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジやグッド・シャーロットの作品を手掛けている)は、〈そのままでいい〉って言うんだよ。オーガニックでフリーな雰囲気を残すことを第一にしたんだ。僕が間違って出してしまった和音もそのまま入っているほどなんだ(笑)」。
彼らの若さからしても、いまだにバンドは発展段階。あらゆるものを貪欲に消化/吸収してしまう。それは収録曲に含まれる多彩な音楽要素、ひいては作品全体のカラフルさを取ってみてもあきらかだ。
「僕たちのバンドの良いところって、そういう縛り方をしないことなんだ。もちろんある一定の基準はあるんだろうけど、〈このアイデアはダメだ〉となったことは今のところ一度もないな。“Make A Move”などのストリングスも、当初はジェイミー(・オリヴァー)のキーボードを入れる予定だった。でも、エリックが〈生音〉を提案してきてね。彼の言うとおりにしてみたのさ。正直、あまり縛らないほうが良い音楽を作れると思う」。
サウンド・ガーデンやアンスラックス、はたまたガンダムやマクロスと共に多感な時期を過ごした彼らに、UKラウド・ロック・シーンの未来を背負っているという実感はない。つい先日もUKにおけるリンキン・パークのツアー・サポートということで、1万2,000人ものオーディエンスを前に完璧なパフォーマンスを披露したばかり。そして、まだまだ音楽以外の遊びにも熱心な様子。メンバーが6人もいれば、話題にも事欠かない。
「〈オズフェスト〉の最中にケリー・オズボーンのゴルフ・カートを盗んだんだ。すぐに彼女の名前は消して〈ロストプロフェッツ〉って書いてね。結局、セキュリティーと追いかけっこが始まって、最終的には没収されちゃった。でもさ、そんな事件の前にケリーが乗ってるのを見かけたんだけど、彼女はスゴかった。会場内に簡易トイレってあるだろ? 彼女、人が入ったのを見計らって、カートで突っ込むんだ!! ひどい話なんだけど、あれはおかしかったよ。さすがだよね(笑)」。(武山英丈)