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第10回 ─ 70'sフュージョン

第10回 ─ 70'sフュージョン(2)

連載
Discographic  
公開
2003/02/20   16:00
更新
2003/04/09   12:48
ソース
『bounce』 239号(2002/12/25)
テキスト
文/大石 ハジメ(bounce)×馬場 雅之(タワーレコード新宿店)

THE CRUSADERS 70'sフュージョンの代名詞、クルセイダーズがファンキーな新作を携えて戻ってきた!!


 クルセイダーズ―― フュージョンという音楽を語るとき絶対外せない名だ。そのジョー・サンプル(キーボード)、スティックス・フーパー(ドラムス)、ウィルトン・フェルダー(サックス)、ウェイン・ヘンダーソン(トロンボーン)の4人組は50年代にジャズ・コンボとして西海岸でデビューして以来、歩をひとつにし、70年代に入るとジャズをソウルやファンクと文字どおり〈融合〉(フュージョン)させながらまったく新しい音楽を作り上げてきた。ラリー・カールトンをギターに迎えた77年作『Free As The Wind』やランディ・クロフォードをヴォーカルにフィーチャーした79年の『Street Life』が全世界的に大ヒットを記録し、自分たちのアルバムを発表するのと並行して無数のジャズ/ソウル/シンガー・ソングライターのセッションにも参加。ある意味、70年代の一時期のアメリカ音楽シーンのテイストを彼らが支配していたといっても大袈裟ではないだろう。

 90年代に入ってからは、事実上活動を停止していたクルセイダーズだが、このたびニュー・アルバム『Rural Renewal』で復活。結論からいうと、ゴスペル感覚溢れるいぶし銀のアコースティック・ファンクが横溢しており、実に新鮮な仕上がりになっているのだ。ジョー・サンプルにまずは再始動のいきさつから話を訊いてみるとしよう。

「これは同窓会なんかじゃない。またソウルフルでスピリチュアルな音楽を作ることが必要な時期に差し掛かったと感じたから、このアルバムを作ったんだ。われわれは〈魂を込めて演奏する〉という点で共通した感覚を持っているから、価値ある音楽を作れたと思う」。

 先ほど彼らの新作を〈ゴスペル感覚溢れる〉と表現したが、やはりそのことは強く意識していたらしい。

「洗練された感覚を意図的に排除し、よりソウルやゴスペルの要素を強く感じる作品に仕上げた。本来、アメリカのジャズはメンフィス、ニューオーリンズ、またはカンザス・シティーといった地域(テリトリー)の精神性、つまりゴスペルの感覚を持っていたが、過去20年の音楽からそれは失われてしまっている。われわれはその感覚を取り戻すことを追求したんだ」。

 この新作にはウェイン・ヘンダーソンは参加してないが、その代わりエリック・クラプトンやサウンド・オブ・ブラックネスをはじめ、スペシャルなゲストが迎えられている。

「最近のクラプトンが演奏するゴスペルやブルースはわれわれと感覚的に似ている部分が多いんだ。彼は〈この作品に参加できて光栄だった〉と言ってくれたらしいが、私も彼と共演できて嬉しいと思う」。

 ところで彼らは半世紀にも渡ってジャズとさまざまな音楽をクロスオーヴァーさせてきたわけだが、ハードコアなジャズ信者からの圧力も相当厳しいものがあったのでは?

「一部のミュージシャンや評論家はジャズを論理的で機械的なものと捉えてわれわれを締め出そうとした。でも、われわれはジャズをアメリカの地域それぞれに宿るゴスペルの精神だと捉えていたんだ。だから批判された一方で、新しい大人のリスナーも大量に生まれた。時代の流れに逆らうのは素晴らしい気分だったよ。マイルス・デイヴィス、ジョニ・ミッチェル、スティーリー・ダンといった偉大なアーティストたちのレコーディングにも参加してきたが、70年代はわれわれの〈大開拓時代〉であったと思う。ジャズを紳士気取りの固定観念から開放するための戦いだったんだ」。

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