昨年は、シェーンベルク生誕150年でした。12音技法により音楽を革新した彼は150年前に生まれたという事実に驚きます。
1946年にニューヨークのジュリアード音楽院の校長だった作曲家、ウィリアム・シューマンの提唱により、ジュリアード音楽院の教授らによって結成されたジュリアード弦楽四重奏団。その目的は同音楽院での教育目的だけではなく、演奏会を通じて「スタンダードなレパートリーを生き生きと演奏しつつ、優れた同時代作品を見出し、古典作品に対してと同じ畏敬の念をもって取り上げる」というものでした。
1949年に、このアンサンブルは晩年のシェーンベルクをロサンジェルスに訪問して、弦楽四重奏曲のアプローチについて意見をたたかわせています。さらに翌1950年には御前演奏も行っており、このときの模様をロバート・マンは次のように述懐しています。
「シェーンベルクの予想した以上に、私たちの解釈はワイルドでした。そして、私たちが彼のために最初のカルテットを演奏すると、彼はそれが自分の予想もしていなかった解釈であると明かしました。わたしたちはショックを受けましたが、シェーンベルクは笑い出し、加えてこう云いました。『でも、そのように演奏してください、それでいいのです!』」
それから間もなく、作曲者が歿した1951年から翌52年にかけてコロンビアの30丁目スタジオで収録された4曲のシェーンベルクの弦楽四重奏曲を聴くことができます。
この時はモノーラル録音でしたが、その後65年に同スタジオでステレオ録音された4つの弦楽四重奏曲と聞き比べられます。
1番のみを聴いた印象で恐縮ですが、以下に書きます。
モノーラル版は、テンポも速くアグレッシブな演奏で、カルテットの意気込みが感じられます。録音は72年前の録音にしては比較的クリアで、オンマイクに近く残響が少ない印象でした。
対してステレオ版は、テンポがモノーラル版よりも遅く、弦楽の空間定位もはっきりし残響もあり、まさに30丁目スタジオの音でした。