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electraglide presents Warp20 @ 幕張メッセ 2009年11月21日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ
公開
2009/12/12   18:00
更新
2010/01/18   08:09
テキスト
文/石田靖博、北野創

 

eregra_特集カバー

 

エレクトロニック・ミュージックの老舗……というイメージからどんどん逸脱し、いまやボーダーレスな良作を頻発しまくりのUK品質保証レーベル、ワープが今年で20周年! 豪華ラインナップが揃った記念イヴェントの模様を、bounceでは各アクトごとにレポートいたします!!

 

21:00~ DJ YOGURT @ Room9

 

djyogurt

 

記念すべき〈ワープ20周年祭〉で一番手という大役を任されたDJ YOGURTは、緩めのハウスやダビーなダウンテンポ曲などを織り交ぜたバレアリックな選曲でイヴェントの幕開けをまったりと演出。温かでまろみを帯びた低音の響きがフロアを心地よく震わせ、百戦錬磨の技術と構成力に裏打ちされた淀みないミックスでトリッピーな音世界を生み出していく。終盤でヨ・ラ・テンゴによるサン・ラー“Nuclear War”のカヴァーを投入するなど、ジャンルに捉われない自由奔放なDJスタイルは現在のワープの音楽性とも共振するところがあり、まさに先陣を切るに相応しいプレイを披露してくれた。*北野

 

22:30~ HUDSON MOHAWKE @ Room9

 

hudson mohawke

 

DJ YOGURTの終幕と同時に後方の幕が左右に開いて巨大モニターが登場! アルバム『Butter』のジャケットを飾った斜体のロゴが表示され、もっさりナード風のモホーク君(ちょっと太った?)が姿を現すと場内には大きな歓声が。今年10月にアルバム・デビューしたばかりとはいえ、いまもっとも期待すべきビートメイカーのひとりとして徐々にその名を浸透させているだけに、やはり注目度は抜群。フロアにも一気に人が集まってきた。

 

hudson mohawke_2

 

何かの映画からサンプリングしたかと思しき女性のモノローグでゆっくりと幕を開けると、その後は『Butter』の楽曲を中心に、煌びやかなシンセ音や突飛な声ネタ、つんのめり系のビートなどが絡み合う、ドープとファニーが邂逅したようなオリジナリティー溢れる音世界を創出していく。後方のモニターには昔のTV ゲームや映画などをコラージュした映像が映し出され、その80年代風のレトロで安っぽい作りが独特のポップセンスを持った楽曲とシンクロする様が妙にサイケデリック。“Overnight”“Rising 5”といった人気曲もあらかた披露し、最後は女性ヴォーカルをフィーチャーしたワープ移籍前の名曲“Ooops!”で緩やかに締め。曲の繋ぎなどには粗削りなところもあったが、十分な才気と伸びしろを感じさせるライヴだった。*北野

 

22:30~ FUMIYA TANAKA @ Room11

 

fumiya tanaka

 

停電のように薄暗い幕張メッセに突入するも、セカンドフロア的な〈Room11〉にはまだまだ人が少ない。そんななかを全力疾走してステージ前のベスト・ポイントに移動し、フミヤのDJを浴びる。広すぎるほどの会場だが、低音がボディーブロウのように響いてくるサウンド・システムには予想外の喜びが。この日のフミヤ兄さんは、あきらかにワープ祭という場を意識した選曲で、90年代テクノのような展開の多いトラックを丁寧にミックス。と言ってもホントに古い曲なのかもしれないし、オールド・スクール回帰著しい最新クリックなのかもしれないし……と思わせる、古典と最新のループがテクノの素晴らしさ。ハット&ストールという伊達男的フミヤ兄さんの装い最高、裏が!!!なのにフミヤに来る人最高、テクノ超最高!!! *石田

 

24:15~ STEVE BECKETT @ Room9

 

s_beckett

 

某コンビニに〈社長のごはん〉なるシリーズがあるが、さしずめ今回は〈社長のDJ〉であろう。ワープ社長であり、一部ではエイフェックス初来日時にリチャード熊に入ってたことでも知られるスティーヴ・ベケットのDJは、ステージ前の溝のようなブースでのプレイであった(社長なのに!)。もう初っ端からアンダーグラウンド・レジスタンスの大名曲“Amazon”、そこからブリーピーなテクノ~流麗エレクトロニカ~ピュア凶暴ドラムンベースをスムースなミックスとは無縁のぶっ込みスタイルで繋ぐ繋ぐ。簡潔に言えば、いかにも(というか当然か)ワープの音が好きそうな人の選曲であった。社長なのにその場所最高、エイフェックスもかかって最高、ブレないワープ的センス最高潮! *石田

 

24:30~ CLARK @ Room11

 

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パーカーのフードを目深にかぶった、いかにも英国のパーティー・ピープルっぽいスタイルで登場したクラーク。立ち上がりから強烈なシンセ音がビキビキと唸るエレクトロ調の楽曲で観客の目を一気に覚ましたかと思うと、近年のハードコアなレイヴ路線を踏襲する攻撃的なナンバーを次々と投入して、場の流れを完全に掌握。

 

clark_2

 

“Suns Of Temper”“Luxman Furs”といった最新作『Totems Flare』からの楽曲を中心に、メタルネタのゴリゴリ・チューンやブレイクコア一歩手前の狂騒的なナンバーまでが矢継ぎ早に繰り出され、もはや一寸先の展開も読めない状況に。改名前のクリス・クラーク時代から、トリッキーかつ巧みな曲構成で好事家たちの評価を得ていた彼だが、その才能はライヴでもそのまま大爆発! 緑色のレーザー光線が放射状に飛び交うなか、ノイズまみれのカオティックなビートが次々と表情を変えながら迫り来る壮絶な光景は、果たして愉悦の時間だったのか、それとも悪夢のひと時だったのか? これは体験した人にしかわからない奇跡だ! *北野

 

25:15~ BATTLES @ Room9

 

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ドラム・キットが舞台のど真ん中にドンと居座り、しかもクラッシュ・シンバルは〈吉川晃司の飛び蹴り用?〉と思わずにはいられないほどの高位置へとセット――異様な雰囲気に満ちたステージ上にまず姿を現したのは、3人いるギタリストのうちのひとり、デイヴ・コノプカ。ベース・パートを弾きながら機材を調整し、ループやエフェクトを駆使して瞬く間に重層的なサウンドを現出させる。そこにふわふわ頭のタイヨンダイ・ブラクストン以下3人のメンバーが登場し、お互いの音を確かめ合うかのように演奏をスタート。

 

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ジョン・スタニアーのド迫力かつ正確無比なドラミングと、タイヨンダイのギターとキーボードを同時に弾く曲芸プレイが視覚的な衝撃を生みながら、初っ端から熱量過多気味のグルーヴを会場に注ぎ込む。この日のセットリストは、おそらく半分ぐらいが新曲という豪華な内容。その大半がタイヨンダイの歌声を軸に据えた風通しの良いナンバーとなっていて、これまでの緻密で緊張感に満ちた曲調とはあきらかに異なる方向性を示していたように思う。とは言え、爆発的な盛り上がりを見せるのはやはり“Race:In”“Tonto”といった定番曲。なかでもラスト前の山場で繰り出された“Atlas”では、ZAZEN BOYSばりの祭囃子風ビートも相まって、躁状態にも近い熱狂的な空間を生み出していた。その破壊力はまさに天井知らず! *北野

 

25:30~ ANDREW WEATHERALL @ Room11

 

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さりげなくワープと男の契りを交わし続けているテクノ番長、アンドリュー・ウェザーオールが〈Room11〉に登場。何と言ってもチャールズ・ブロンソンばりの鼻ヒゲ、ボーダーTシャツにチョッキ、その下はサスペンダーというリアル・マリオな番長のルックスに萌え~! そしてノッてる時の構えるような格好も萌え~! しかし音のほうは、最近のロカビリーやらゴス路線など一切なかったかのごとき純度 100%の硬派テクノ! クリック的シンプルさのなか、普通だったら盛り上げるだろ!と思うところでもアゲきらないストイックぶりに萌え~! やはり番長のDJはホント外しがない! まさにワープの裏大黒柱! 実はこの日いちばん長い出番も最高、その場で水割り作って飲むのも最高、テクノ番長の男気超最高! *石田

 

27:15~ CHRIS CUNNINGHAM @ Room9

 

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今夜のハイライトのひとつでもあるのがクリス・カニンガム(以下:蟹)のライヴ! 休止前の最後の開催となった2005年の〈エレグラ〉でのライヴが神領域に突入するほど素晴らしかったので、蟹前の〈Room9〉はスシ詰め状態。スタートと共にステージ後方に3スクリーンが登場しただけで早や絶頂。

 

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その後は AFX“Elephant Song”をバックに裸男女(モロ出し)が殴り合ったり、凶暴ドラムンベースをバックに女性が首を振って叫び倒すホラー的シークエンス(新作)やら、エイフェックス“Windowlicker”やら荒いエロ画像やら犬やら青虫やらメトロノームやらが入り交じったりして〈18禁〉な蟹ワールド全開! そして後半は皆待ってました!なスターウォーズ~「Rubber Johnny」ネタという蟹鉄板画像地獄! サウンドも非常にブルータルかつカオティックで素晴らしい! ということでかなりのシークエンスが2005年といっしょだったのは内緒。しかし初めて見た人は目ん玉飛び出るほど衝撃だったでしょう。モロ出しぶり最高、リンクしたビーム演出も最高、唯我独尊の蟹ワールド超最高! *石田

 

28:00~ FLYING LOTUS @ Room11

 

flying lotus

 

いわゆる〈ポスト・J・ディラ〉と呼ばれる世代を代表する存在として、天才ビートメイカーの名をほしいままにしているフライング・ロータス。ストイックで神秘性すら感じさせるその作風からクールで知的な人物像を何となくイメージしてしまっていたが、ステージ上の彼はとことんアグレッシヴ! 大きな身体を上下に激しく動かし、とっておきのおもちゃで遊ぶ子供のように無邪気な笑みを浮かべながら、自作曲を中心に次々とドープなサウンドをフロアに送り込んでいく。ゴジラの鳴き声を挿入してみたり、マイクを握ったかと思うと延々と笑い続けたりと、茶目っ気のあるところも見せつつ、ダブ・ステップやドラムンベースを採り入れたコズミックなビートの奔流で場内を終始圧倒。しかもラストはUGK“Int'l Players Anthem (I Choose You)”からスヌープ・ドッグ“Who Am I(What's My Name)?”へと繋ぐヒップホップ魂に満ちた選曲で、その熱さに思わずガッツポーズしてしまったのは自分だけではないはず! *北野

 

29:00~ LFO @ Room9

 

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さあ一晩続いた灯火管制的薄暗さも終わりを告げる時が来た! ワープ祭のトリを飾るは初期の大ヒットでワープの運営資金を稼いだ恩人、LFO! 〈5、5時!?〉と訊き返したくなる時間、フロアの隅や後ろのほうは当然だが、真ん中まで野戦病院のごとく積み重なる人々を踏み越えて〈Room9〉に突入すれば、そこには最後までワープ祭を楽しみ尽くそうという貪欲かつ元気な方々でいっぱい。

 

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それを知ってか知らずか、マーク・ベルは普通ならチルな時間であろう朝方にはまったく相応しくないハイテンションぶりでガンガン飛ばしまくり! 初期の大ヒット曲“LFO”とかですらビックリするよなBPMで疾走! まさに圧倒的なノリとサウンドで長き夜を締めたのは流石LFO!ということで、実は2003年の〈エレグラ〉でのライヴと基本構成は変わってないことは内緒にしておこう。6時までがんばった皆さまお疲れ! フロア真ん中で寝るほど疲れた皆さまお疲れ! トイレや物販での戦いに耐えた皆さまお疲れ! そして〈エレグラ〉に関わったすべての皆さま最高です! *石田

 

▼ワープ20周年関連作品

 

 

▼文中に登場したアーティストの関連作を紹介

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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