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第41回 ─ BRIT POP

第41回 ─ BRIT POP(4)

連載
Di(s)ctionary
公開
2009/09/24   18:00
更新
2009/11/06   15:26
ソース
『bounce』 313号(2009/8/25)
テキスト
文/妹沢 奈美

III その後の流れと現在のシーンに見るブリット・ポップの影響

 さっきオアシスとブラーのシングル対決の話を出したでしょ? これをファンがレーベルとメディアのでっち上げだと感じたことが、ブリット・ポップの斜陽を促進したの。皮肉よね。そもそもこのブームは、それまでポップ・ミュージックに積極的でなかった若年層をCDショップに走らせた、いわば音楽ファンの新陳代謝が行われたものでもあるのよ。そんなキッズを閉口させ、音楽とは何か、もっと聴くべき音楽や新しい音楽があるのではないか、と興味を他に移らせてしまったというわけね。

 97年にデーモン・アルバーンは〈ブリット・ポップは死んだ〉と発言、その後ゴリラズという新たな場所で自己実現をめざすことに。また、オアシスに憧れてテイク・ザットを脱退したロビー・ウィリアムスの“Angels”が大ヒット。さらにドラムンベースやビッグ・ビートの流行などでリスナーが分散されるようになり、ブリット・ポップという言葉は急速にメディアから消えていきました。そして、その終焉はレディオヘッド『OK Computer』(98年)だと、先生は考えてます。UKロック云々を飛び越えて世界中で大ヒットした本作で、ロックの地図が大きく塗り替わったからね。

 最近では、意識的に英国的な音を鳴らすカイザー・チーフスのブレイクでUKバンドの意識も変わり、また、USからもブリット・ポップを愛して止まないアメイジング・ベイビーなんてバンドが登場。彼らの他にも、あの頃を思わせる享楽的なバンド・サウンドが確かに増えてきたわね。これを機に、ブリット・ポップの再評価が進みますように。若き日にブリット・ポッパーだった先生は、そう願います。