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I ブリット・ポップの成り立ちと特徴
はい、今日のテーマは〈ブリット・ポップ〉ね。ここ数年、ブリット・ポップからの影響を公言するバンドが登場したり、今年はブラーが再結成したりと、近年また注目を集めはじめた印象があります。なので、ここらできっちりおさらいしておきましょう。
ブリット・ポップは、94~96年頃にUKで起こったロック・バンド主体のムーヴメント。とはいえ、特定のスタイルを指してはいないのよ。簡単に説明すると、もともと90年代初頭は、USグランジ/オルタナ・ブームがUKを席巻していました。そんななか、ブラーが93年に英国性をテーマにキンクスからの影響をモロ出しした2作目『Modern Life Is Rubbish』を発表。同年にスウェードが、英国的なダークさと妖艶さを掛け合わせた初作『Suede』をリリースし、急に〈英国的〉というモチーフが注目されるようになったの。すぐさま、音楽業界は次なる〈英国的な新人〉を探しはじめたわ。ビートルズの遺伝子を持つオアシス、ローリング・ストーンズのスタイルを継承したシェッド・セヴン、ストーン・ローゼズに憧れてロックならではの純粋さとグルーヴを意識したブルートーンズなど、挙げればきりがないほど百花繚乱。〈ブリット・ポップ(苦笑)〉みたいな風潮が長くあったせいで、音楽的な部分にさほど着目されることなく消えた人たちも多いけど、実は興味深いバンドが山ほどいました。また、この時期にポール・ウェラーらヴェテランが若手からのリスペクトを受けて勢いを盛り返したことも覚えておいてね。まあ、基本的には新人がブームの中心になっていたから、フレッシュな空気がシーンを満たしたのよ。
ゆえにこのブーム、政権交代を目論んでいた労働党にも応援されました。新しい価値観を強調して若者層の支持を狙う彼らの思惑に、ぴったりだったわけ。ブレアが首相になった後、ノエル兄ちゃんが首相官邸に招かれたのには、そういういきさつがありました。
そんなブリット・ポップの天王山といえば、95年のブラー&オアシスのシングル対決。二大バンドのシングルが同日にリリースされることが決定、〈どちらが1位を獲るか?〉がBBCニュースでも報道されたほど。アホよね。つまり、それくらい英国全土を巻き込んだ国民的な大ブームだったんです。