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第92回 ─ ダップトーンとその周辺

連載
Discographic  
公開
2009/06/24   18:00
更新
2009/06/24   18:03
ソース
『bounce』 311号(2009/6/25)
テキスト
文/池谷昌之、出嶌孝次

ダニエル・メリウェザーのバックでも大活躍の敏腕集団=ダップ・キングスの周辺を洗いざらい紹介!

 いまやマーク・ロンソン絡みの作品に欠かせない存在となったのが、NYに拠点を置くダップトーンのミュージシャン軍団=ダップ・キングスである。ここではマークと出会う前からそのスジの顔役だった彼らの動きを辿ることで、レーベルの歩みも簡単に振り返ってみたい。

 発端はガブリエル・ロスとフィリップ・リーマンがNYで出会ったことだ。2人は往年のファンク・サウンドを現代の感覚で再現すべく、96年にデスコを設立。奇しくも同年のロンドンではケブ・ダージがレアな7インチを現代のダンス音楽として楽しむ考え方=〈ディープ・ファンク〉を提唱しており、デスコもその文脈に則って支持を広げていく。また、ロスはボスコ・マンの名でプロデューサーとしてサウンド面を掌握し、ダクタリスやアンティバラスの一員としても周辺の動きを先導していく。が、リーマンとロスの間に方向性の違いが生じ、デスコは2000年に分裂。その音源の権利を受け継いだロスがニール・シュガーマンと新たに設立したのがダップトーンであり(レーベル名はJBのバックを務めていた白人バンドのダップスに由来?)、そこで再編成されたハウス・バンドこそがダップ・キングスというわけだ。

 構成員はロス=ボスコ・マン(ベース)を中心にシュガーマン(サックス)や元マイティ・インペリアルズのホーマー・スタインワイス(ドラムス)、デイヴ・ガイ(サックス)、トーマス・ブレネック(ギター)らで、彼らを軸にしたさまざまなバンドの作品も含めて着実にカタログは厚みを増している。個人やバンドが外部のメジャー仕事を請け負っても、レーベル自体の動きは極めてマイペースで浮き足立つ様子がないのも頼もしい。

 なお、ダップトーンが経営難に陥った際、ケブ・ダージらDJ/コレクターが自身の超レア盤をオーディションに出品して資金を寄付したという美しい話がある。それはこのレーベルのような存在がいかに重要か、多くの音楽好きが理解している証拠なのではないか。*出嶌孝次

▼ダップトーンのカタログ作品を一部紹介


ベン・ウェストビーチ“So Good Today(The Dap-Kings Remix)”を収めたコンピ『Soul Shaker Vol. 4』(Record Kicks)