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第37回 ─ THRASH

連載
Di(s)ctionary
公開
2009/05/21   02:00
更新
2009/05/21   17:48
ソース
『bounce』 309号(2009/4/25)
テキスト
文/粟野 竜二

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

I スラッシュの成り立ちと特徴

 今回の講義は〈スラッシュ〉について。いわゆる〈スラッシュ・メタル〉をメインに、そこから派生した〈クロスオーヴァー・スラッシュ〉についても解説するよ。スラッシュ・メタルが誕生したのは80年代初頭のこと。70年代後半に勃興したNWOBHM(ニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィー・メタル)や、ディスチャージなどのハードコア・パンクに影響を受け、それまでのヘヴィー・メタルよりもさらに速さと過激さを追求するバンドがシーンを形成していったんだ。その音楽性は、〈スラッシュ〉という言葉の意味通り〈鞭を打つ〉かのような高速のギター・リフと、ツーバスを主体とした手数/足数の多いドラムが特徴だね。長尺のギター・ソロよりもあくまでリフ主体で、ヴォーカルは歌い上げるタイプよりも音程を重視しない吐き捨て型のものが多かったため、結果的に多くのハードコア・ファンからも支持されるようになるんだ。

 ムーヴメントの中心はサンフランシスコ周辺。ゆえにエクソダスやテスタメントらが鳴らすザクザクとしたギター・リフは、〈ベイエリア・クランチ〉とも呼ばれているんだよ。そのベイエリア勢と、通称〈スラッシュ四天王〉のメタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックスがシーンを牽引し、ドイツを筆頭に他国にも影響を及ぼしていったんだ。

 さらに、もともとハードコアの要素が強かったスラッシュ・メタルだけど、シーンが成熟するにつれて境界線はますます曖昧になり、アンスラックスのメンバーが結成したSODや、スケーター・パンクの代名詞であるスイサイダル・テンデンシーズらが、〈クロスオーヴァー・スラッシュ〉という新たな潮流を生み出したことも忘れちゃいけない。このようにして、メタル・ヘッズもハードコア・ファンも巻き込んだスラッシュ・ムーヴメントは80年代後半にピークを迎えたというわけだ。さてと、次の時間では実際に聴いてみようか。みんな、ちゃんと首は鍛えてきたかな? それでは、レッツ・ヘッドバンギング!

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