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第31回 ─ HARD BOP

連載
Di(s)ctionary
公開
2008/09/25   01:00
更新
2008/09/25   18:24
ソース
『bounce』 303号(2008/9/25)
テキスト
文/馬場 雅之

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I ハード・バップの成り立ちと特徴

 今日のテーマはジャズだよ。ジャズといってもいろいろなスタイルがあるけれど、そのなかでいちばん〈ジャズらしいサウンド〉と言っても過言ではない〈ハード・バップ〉について解説していこう。ジャズは4ビート、いわゆるスウィングするリズムが軸にあって、そこに管楽器やピアノがアドリブ(即興演奏)を乗せていく音楽なのはみんなも知ってるよね? 40年代にある一定のコード進行に沿ってアドリブを展開するモダン・ジャズの原型スタイル〈ビバップ〉が生まれたわけなんだけど、そこにブルースやゴスペルといった黒人音楽などの要素を加えたものが、50年代に入って誕生したハード・バップなんだ。力強いメロディーと管楽器のハーモニーが印象的なスタイルと言えるかな。

 とはいえ、ロックをヘヴィーにして音にエッジを加えるとハード・ロックと呼ばれるものになるけれど、ビバップとハード・バップの場合はそれほど明確な違いがあるわけじゃない。ハード・バップは50年代前半に流行したウェストコースト・ジャズ(白人の作るライトなジャズ)への反動みたいなかたちで、NYを中心とする黒人ミュージシャンが押し進めていったムーヴメントなんだよ。これ以降のジャズはモード・ジャズ~フリージャズ~ソウル・ジャズなど、さまざまな変化を伴って多様化していくわけだけど、ハード・バップは誰が聴いても〈あ、これはジャズだ!〉とわかるサウンドのひとつと言えるんだ。どういう作品を聴けばこの音に当たるかというと、まず名門レーベルのブルー・ノートから発表された50年代の名盤は間違いないね。オリジナルのレコード番号でいうと、1500~4000番台前半あたりだな。ほかにはプレスティッジからの作品も良くて、やはり録音年代だと50年代半ばから58年くらいの音源になるんだけど……まぁ、つべこべ言わずに2時間目で実際に聴いてみようか。