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I ジャム・バンドの成り立ちと特徴
今日の授業は〈ジャム・バンド〉です。みんなマイク……もとい、ノートの用意はいいかな。まず、ジャム・バンド元年は95年と言われてます。この年が何を意味するかというと、60年代から活動をスタートさせ、凄まじいライヴ集客力を誇ったグレイトフル・デッドが解散した年なんだ。彼らこそがジャム・バンドの元祖。具体的に説明すると、とんでもない長さのジャム・セッションをライヴに組み込んだこと、それとDIYなスタンスでのライヴを活動の軸に置いていたことが挙げられるね。特に重要なのは後者。デッドは観客にライヴを録音することを許可し、そこからテープ・トレードの習慣が生まれた。デッドのライヴは毎回内容が違ったこともあって、彼らを追いかけるデッド・ヘッズと呼ばれる熱狂的なファンを生み出すに至ったんだ。つまり、ファンを含む一大コミュニティーが出来上がったんだね。で、デッドの解散以降、そうしたファンの一部は新たにバンドを始めたり、即興演奏を軸に置いたバンドを探し求めたりした。そうやって徐々にシーンが形成されていったんだ。
そのなかで存在感を増していったのがフィッシュ。2004年には活動休止してしまった彼らだけど、最後のライヴには11万人もの聴衆が押し寄せたっていうんだから、その人気の凄まじさがわかるはず。ひとつ重要なのはデッドやフィッシュ自体、さまざまな音楽を消化したハイブリッドなバンドだったということ。むしろそのインディペンデントなスタンスが愛されてきたわけであって、一連のジャム・バンドもまた音楽的な統一性は薄いんだ。いまじゃシーンもずいぶんと多様化してきている。でも、ライヴ会場には観客がセットしたマイクがズラリと並び、みんな長~いジャムを思い思いに楽しんでいるんだ。そんな自由な空気感こそがジャム・バンドの〈核〉と言えるかもね。ってわけで、各自好きなように以下の参考作品を楽しむように。ピース!