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第153回 ─ 復活から1年……いよいよ充実してきたスタックスの現状をレポート!!

連載
360°
公開
2008/08/28   21:00
ソース
『bounce』 302号(2008/8/25)
テキスト
文/林 剛、ディスクガイド/池谷 昌之、出嶌 孝次

 57年に創立され、59年頃からメンフィス・ソウルの名門レーベルとして躍進を遂げたスタックス。数多くの名曲を生んで76年に幕を下ろし、以降はファンタジー傘下でカタログとしてのみ存在していたレーベル(名)だったが、創立50周年となる昨年にコンコードの配給下で復活したのはご存知のとおりだ。かつてヴァージンのA&Rだったコリン・スタンバックが舵を取る現体制では、旧音源のリイシューと同時に新録にも意欲的に取り組み、ラインナップを充実させている。

 新録第1弾として登場したのはアース・ウィンド&ファイアのトリビュート盤。そこに参加していたアンジー・ストーンやレイラ・ハサウェイがそれぞれ新作をリリースし、ソウライヴもレーベルの門出を祝うような力作を発表した。そして、あのリオン・ウェアも電撃契約して新作を発表したばかり。早くから契約していたエンダンビの新作も待たれるところだ。

 と、そんな名前を見れば、新生スタックスが〈メンフィス・ソウルの復活〉を謳ったレーベルでないことはあきらかだろう。逆にその顔ぶれからは、サウンドの継承や再生ではなく、かつてスタックスが有していた誇り高きソウル・スピリットやミュージシャンシップをいまに継承しようというレーベルの理念のようなものが見て取れる。つまり新生スタックスは、旧スタックスも含めたブラック・ミュージック全体のルーツに忠実でありながら現行シーンにも切り込んでいける新旧のアーティストを迎え入れているのだ。10月に新作が予定されているニッカ・コスタのようなソウルフルな白人アーティストの獲得という人種の融合ぶりも、ある意味、スタックスのスピリットの継承だと言えよう。

 一方でスタックスは、ここにきてスティーヴ・クロッパーやエディ・フロイドといった往年のスタックス名選手たちを招き入れ、サウンドも含めた原点回帰の姿勢を見せはじめてもいる。これはこれで伝統あるレーベルとして当然のあり方だろう。そして、この先には、かねてからレコーディング中との噂が流れていたアイザック・ヘイズの新作リリースが控えている……と美しく締め括りたかったが、残念なことに彼は本稿執筆中の8月10日、帰らぬ人となってしまった(享年65歳)。だが、いまはヘイズが70年に出したアルバム・タイトルを都合よく新生スタックスへの遺言だと解釈しよう。To Be Continued――そう、スタックスはこれからも続くのだ。