III その後の流れと、現在のシーンにおけるAORの影響力
80年代が進むにつれて、AORは急速に存在感をなくしていく。しかしそれは表立って見えなくなっただけで、当時の流行だったブラック・コンテンポラリーや産業ロックのなかに分散した感が強い。例えば、マイケル・ジャクソンの大作 『Thriller』にも、TOTOのメンバーがミュージシャンやソングライターとして潜んでいた。80年代終盤、ボズ・スキャッグスやボビー・コールドウェルの復活を機に〈AORリヴァイヴァル〉が騒がれたが、本格的な再評価はレア・グルーヴや日本での〈FREE SOUL〉ムーヴメント真っ最中の90年代中盤になってから。一方、マイケル・マクドナルドの“I Keep Forgettin'(Everytime You're Near)”を用いたウォーレンGのように、AORはヒップホップ/R&Bのサンプリング・ソースとしてもてはやされ、TOTOの“Georgy Porgy”を取り上げたエリック・ベネイなど積極的にAORチューンをカヴァーする例も出てきた。
こうした動きを経て、近年では現代版AORと言うべきタルクやベニー・シングスのようなニューカマーが出現してきている。マイケル・ブーブレ、ウーター・ヘメルといった若手ジャズ・シンガーの作品にも、その影響は顕著だ。日本ではキリンジ、冨田ラボあたりがその典型。最近TOTOの“Africa”をカヴァーしたカール・ウルフが人気だが、こうした傾向はいまに始まったことではないのだ。
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