II それでは実際に聴いてみよう! その2
MILTON NACSIMENTO 『Minas』 Odeon(1975)
歌詞の検閲を回避するために生み出されたのが〈ブラジルの声〉とも評されるミルトンの個性的なヴォーカル・スタイル。故郷であるミナスの風景を切り取った“Ponta De Areia”はどことなくオリエンタルな響きのある曲で、後にTHE BOOMにもカヴァーされたんだ。
DJAVAN 『A Voz -Ao Violao -A Musica De Djavan』 Som Livre(1976)
北東部のマセイオー出身で、ビートルズのコピー・バンドを組んでいたというジャヴァン。スティーヴィー・ワンダーとの交流でも知られている人だね。この初作では、故郷の砂埃を被ったような素朴な楽曲の、実は洗練された横顔にハッとさせられるよ。
JORGE BEN 『Africa Brasil』 Mercury(1976)
サンバにボサノヴァ、ロックにファンクにリズム&ブルース……このジョルジ・ベンが先天的に備えていたミクスチャー感覚にカエターノやジルが憧れていた、というのは納得だね。アコギをエレキに持ち替え、サッカー賛歌も満載の本作を体感して奮い立たないヤツは男じゃないよ!
IVAN LINS 『Somos Todos Iguais Nesta Noite』 Odeon(1977)
このイヴァン・リンスもエリス・レジーナに才能を見初められてプロとしてのキャリアをスタートした一人なんだ。30代前半の脂が乗り切った時期に制作された本作で聴けるアーバン&メロウなサウンドと、ファドやショーロに着想を得た〈泣き〉のアレンジの妙ったら。
JOYCE 『Feminina/Agua E Luz』 EMI Brazil
MPB時代には女性のシンガー・ソングライターが伸び伸びと活躍できる土台も整ったんだ。ジョイスの80/81年作を2in1にした本盤では、高速スキャットを駆使した力強いナンバーから娘たちへ贈られたララバイ“Clareana”まで、彼女の幅広い音楽性が光っているよ。
TONINHO HORTA 『Toninho Horta』 EMI Brazil(1981)
〈街角クラブ〉一派の諸作にも深く関わり、同地特有のスペイシーなミナス・サウンドの特徴的なギターを奏でてきたトニーニョ・オルタ。パット・メセニーも駆けつけたこの作品は、ブラジリアン・フュージョンの金字塔である以前に歌モノとしても秀逸な一枚だよ。