II それでは実際に聴いてみよう! その1
SLINT 『Spiderland』 Touch & Go(1991)
後にシカゴ音響派の要人となるデヴィッド・パホとブライアン・マクマハンが顔を揃えた伝説的バンドの2作目だ。ヒリヒリとした緊迫感と劇的な曲展開、ワビサビを利かせた音世界が生み出す狂気と美しさに、先生も足を向けて寝られないポスト・ロック誕生前夜の最重要名盤である!
THE SEA AND CAKE 『The Sea And Cake』 Thrill Jockey(1994)
小難しいだけがポスト・ロックじゃないということは、シカゴ音響派きっての洒脱アート・ロック集団である彼らのサウンドを聴けばわかるはずだ。ボサノヴァ、ジャズ、ギター・ポップなどを織り交ぜた楽曲を、先生も昼下がりのカフェで愛聴しているぞ。
DON CABALLERO 『Don Caballero 2』 Touch & Go(1995)
バトルスの頭脳、イアン・ウィリアムズも在籍したカリスマ・インスト・バンドだ。ハードコア魂炸裂の鋭角なギター・リフに高速テクニカル・ドラム、変拍子だらけのプログレッシヴな曲展開は、ポスト・ロック界に数学的ロック=〈マス・ロック〉の分派を生んだ。
DIRTY THREE 『Horse Stories』 Touch & Go(1996)
ヴァイオリン、ギター、ドラムスという変則的な編成によるオーストラリア発のインスト集団。寂寥感に満ちたヴァイオリンのむせび泣きを聴くたびに心が掻きむしられて……ウゥッ。おっと失礼。まるで〈耳で聴く映画〉と形容したいほど、そのサウンドは映像的だ。
TORTOISE 『Millions Now Living Will Never Die』 Thrill Jockey(1996)
〈ポスト・ロック〉という言葉を聞いてまず思い浮かべてほしいのがトータスである! そして、この2作目こそ彼らの金字塔的一枚であり、ポスト・ロックを世に知らしめた名作なのだ。ここにはロックとジャズの融合のさらに〈その先〉が提示されている!
STEREOLAB 『Emperor Tomato Ketchup』 Elektra(1996)
クラウト・ロック再燃を先導したり、アナログ機材の未来的な使用法を提示したり……と、UKポスト・ロックの先駆者として彼らが与えた影響は絶大だ。ジョン・マッケンタイアが共同プロデュースを手掛けた本作で、ロンドンとシカゴは一本の線で結ばれた。