III 現在のシーンにおけるクラブ・ジャズの動き
さて、ここまで説明してきたように、折々のクラブ・ミュージックも昔のジャズも等価で捉えながら発展してきた〈クラブ・ジャズ〉はもちろん現在進行形のもので、ここ数年の傾向では〈ジャズへの接近〉が目立っているね。クラブ側を出所とするDJやクリエイターがミュージシャンと絡むなどして旧来のジャズへもどんどん視野を広げ、逆にミュージシャン側にもクラブ・ジャズとして機能する生ジャズを作る人が増えてきたっていうことだ。最近では主に後者を指してニュー・ジャズと括ることも多いね(サン・ジェルマンの項で触れたニュー・ジャズとは別……ややこしい!)。本当ならその界隈で盛り上がるヨーロピアン・(ニュー・)ジャズの話をもっとすべきだけど、それはまた今度。一方、シーンの元締めたる沖野修也(Kyoto Jazz Massive)がいる日本は先進的で、ファラオ・サンダースとの共演も実現させたSLEEP WALKER、ロウ・フュージョンやフリースタイルからもリリースのあるquasimodeらが、旧来のジャズ・ファンをも魅了しつつある。須永辰緒は〈夜ジャズ〉などで日本の古典にもクラブ・ジャズの対象を広げていたし、ブルー・ノートの音源をクラブ・ジャズ解釈する企画も日本主導のモノが多いよね。海外勢ではヒップホップ世代の鍵盤奏者たるロバート・グラスパーや、オーセンティックな歌い手のホセ・ジェイムズといった逸材もいる。ただ、ここまで範疇が広がると、安易に〈クラブ・ジャズ〉と括るだけじゃ逆に何の説明もできないところにまで来たので……今後は〈クラブ・ジャズ〉の濫用は禁止だぞ!
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