さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!
I クラブ・ジャズの成り立ちと特徴
さて、今日の講義は〈クラブ・ジャズ〉。何気なく濫用されてる言葉だけど、最近諸君のレポートを読むとどうも偏った認識が多くて、先生は課題提出のたびに気になってたんだ。だから少々まどろっこしい講義になるけど、基本は簡単。クラブ・ジャズとは、〈ダンス・ミュージックとしてのジャズと、ジャズの影響下にあるダンス・ミュージックを並列に捉えるマナーやアティテュードや視点や解釈〉のことだな。長い? まあ、注意すべきは〈クラブ・ジャズ〉なる明確な音楽が存在するわけじゃないってこと。〈ジャズ〉という単語が付くからって、〈クラブ・ジャズ=クラバーが好む亜流のジャズ〉と解釈するのも大いなる勘違いだ。アシッド・ジャズと同様に、クラブ・ジャズもジャズ愛好家的な視点とはまったく異なる音楽の捉え方だからね。
じゃあ、その〈マナーやアティテュードや視点や解釈〉はどこから生まれてきたのか、っていう話。発端はジャズに踊るための音楽としての価値を与えた80年代ロンドンの〈ジャズ・ダンス〉ムーヴメントということになるね。やがてパトリック・フォージやジャイルズ・ピーターソンらのDJ陣がジャズ以外の音楽も〈ジャズ〉の名の下にプレイするようになって、その坩堝がアシッド・ジャズを生み出すんだけど、根底には〈評価されなかったものに別の評価軸から光を当てる〉というレア・グルーヴの視点もあった。で、基本的にはそれらの延長線上にありつつ、現在進行形のクラブ音楽に対してもより視野を広げることで生まれたのが、クラブ・ジャズという視点だと言えるね。だから、いわゆるジャズはもちろん、フューチャー・ジャズ、エレクトロニカ、ハウス、ブロークン・ビーツ、ヒップホップなど(の一部)がそこにはあるわけだ。用語だらけでノートを取るだけでも大変だろうから……具体的に聴いてみようか。