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第23回 ─ LOVERS ROCK

連載
Di(s)ctionary
公開
2008/02/14   18:00
ソース
『bounce』 295号(2008/1/25)
テキスト
文/米光 達郎

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

I ラヴァーズ・ロックの成り立ちと特徴

 ハーイ、みなさん! もうすぐドキドキのヴァレンタイン・デイだね。ということで今回の講義は、恋人同士で聴けば必ずスウィートな時間を過ごせる〈ラヴァーズ・ロック〉です。ハード・ロックやへヴィー・ロックなど〈ロック〉が付くジャンルはたくさんあるけど、ラヴァーズ・ロックはレゲエのいちジャンルなんだ。レゲエがジャマイカで生まれたのはみんなも知っているよね。でもこちらはロンドンが発祥。もともとジャマイカがUKの植民地だった関係から、ロンドンにはジャマイカ移民が多く住んでいて、スカやレゲエが好んで聴かれていたんだ。そこで在英のレゲエ・ミュージシャンが、UKで人気のあったソウル・ミュージックをブレンドした、スウィートでメロウなレゲエを作ったというわけ。その記念すべき最初の曲が、75年にルイーザ・マークが歌った“Caught You In A Lie”とされている。14歳の少女のあどけないヴォーカルに、ダブの鬼才ことデニス・ボーヴェル率いるマトゥンビのドスの効いた演奏というミスマッチな組み合わせが思わぬ効果を発揮。甘いんだけどちょっぴりホロ苦くて、気分次第で踊ったり、チルアウトしたりもできる魔法の音楽が誕生したんだ。

 そしてこのムーヴメントは瞬く間に世界中に浸透。当然ジャマイカにも逆輸入され、デニス・ブラウンやフレディ・マクレガーら大御所シンガーもこのスタイルを採り入れて傑作を発表したんだ。

 一方、日本では〈レゲエ=ボブ・マーリー〉みたいな画一的な見方をされがちで、このジャンルはあまり注目されなかったんだ。ところが非レゲエ系アーティストになぜか愛され、80年前後には坂本龍一や加藤和彦によってかつてのアイドル女優、テレサ野田や岡崎友紀のシングルで採用されるなど、実に幅広く歌われるようになっていくんだよ。