手にしてるのは当時のユウさんTシャツ。真っ赤な目をしたフクロウ!
上野 俺、一回、LICENSED 2 DEF(L2D)*3に加入を懇願して。
*3 YOU THE ROCK★率いるヒップホップ・ポッセ。イーモトロールらが所属。
ブロンクス 懇願したの(笑)?
上野 高3の時だったんだけど、ハーレムでユウさんにデモテープ渡して「マジで入れてください」ってお願いしたんすよ。そしたら「よし、明日、お前クラブチッタ来い!」って言われて。で、チッタに行ったらユウさんが「お前らそこに立ってろ。舞台の袖からオレのライヴ勉強しとけ!」って言うからさあ、ドリームラップス*4全員で気をつけの姿勢(笑)。で、ライヴ終わってからも延々待ってたら、そこを通りかかったRINOさんたちに「お前ら何やってんの?」って言われて。「ユウさんに言われて立ってます」って答えたら「ユウちゃんもう帰ったよ?」って。
*4 上野氏が以前所属していたヒップホップ・グループ。
一同 (爆笑)。
上野 で、「L2Dに今日から入れてもらえるってことだったんすけど」って言ったら「自分でやったほうがいいよ」って。
ブロンクス それはそれで間違いない(笑)。
上野 でも最近になってようやく、ユウさんと2人っきりでしゃべる時間も出来た。苦節10年で。最初に一緒にやった時点では緊張しちゃってしゃべれなかった。あの(ロベルト)吉野ですらガチガチで、YOU THE ROCK★という人間を直視できない。吉野って、RHYMESTERとかスチャダラパーにはそんなに思い入れないんすよ。けど、ユウさんだけは「ヤバいっす……」みたいな感じで。
ブロンクス ユウさんって、その袖で立たせたエピソードもそうだけど、ビートたけしの“浅草キッド”って曲みたいな、東京の昔ながらの芸人の気風があるよね。
上野 勉強になったなあって。
ブロンクス それが『THE★GRAFFITI ROCK '98』になるとまたちょっと違うもんね。あの頃は、〈ヒップホップ最高会議〉*5の千葉さんのウィルスがユウさんに伝染して、ユウさんもスペイシーな時期に入っていった(笑)。その時代はその時代で俺も〈エレクトロサミット〉*6とか毎回通ってたし、すげえファンなんだけど。
*5、*6 どちらも、千葉氏らが主催していたエレクトロ・ヒップホップのイベント。
上野 名前変えてエレクトロやったりしてましたからね。俺たちもそれに影響受けて、オールドスクールを超掘ったりした。
ブロンクス 98年頃のユウさんは、エレクトロとかオールドスクールとかに行ってた。そのときはもうメインストリームとか関係なくやってたんだろうけど、俺らはユウさんを信じてたから、それが主流だと思って追っかけてたよね。
上野 それはあった(笑)。みんなピコピコいってるもんとか、やたら買ったりしてたもんな。ラテン(・ラスカズ)さんのエディットもののミックス・テープとかめちゃくちゃ買ったりしてた。なんだったんだろう、あの時代は(笑)。
ブロンクス でも、肥やしにはなってるよね。
マルコム・マクラーレンのデビュー作『Duck Rock』。角ラジカセの元祖!
上野 『THE★GRAFFITI ROCK '98』に入ってるSHINCOさんの曲とかもオールドスクール・フレイバーでしたよね。“DUCK ROCK FEVER”。
ブロンクス “DUCK ROCK FEVER”ってタイトルがもうマルコム・マクラーレンでしょう。当時、千葉さんが「ラジカセは電波をキャッチすると角が生えてくる」って言ってた(笑)。
上野 (爆笑)。千葉さん最高だなー。ZEN-LA(-ROCK)くんのアルバムでも、千葉さんのヴァースは3本録ってるんだけど全部ラップが違うんだよ。真ん中からと左右からで全部一緒に流れてて。意味わかんねえし、すごすぎる(笑)。……ヤバい、『THE★GRAFFITI ROCK '98』辺りの話になってきちゃった。
ブロンクス そうだね。まあユウさんの軌跡をたどるうえで、96~98年あたりの動向は欠かせないから。