
今月のスナップ:映画「トイ・ストーリー」のグラサンがかわいい。イスラム帽も当時のユウさんグッズ!
上野 でも『THE★GRAFFITI ROCK '98』の頃には、一般の人も巻き込んだヒップホップ・ブームは落ち着いてたかもしれない。俺らはヒップホップにどっぷり浸かってたから気付いてなかっただけで。『THE SOUNDTRACK '96』の頃って高校生だったんだけど、結構みんながヒップホップ買ってたんすよね。
ブロンクス その後にV-BOY*6になるようなやつらも当時はB-BOYを気取ってたよね。
*6 Vネックのセーターやロングコートを着て、メッシュの入ったロン毛で、色黒で……みたいなスタイルの男をこう呼んだ。後のギャル男。
上野 V-BOY(笑)!
ブロンクス あいつらは……当時の俺らの天敵だった。高校生イヴェントとか、ギリギリ同じ場所にはいるんだけど。努力しないでモテてるチャラい奴ら(笑)。
上野 B-BOYっぽかったやつがV-BOYになって、その後メロコアが流行ったらそっちに流れていった。どんどん変わっていったよね。
ブロンクス そうそう。二度大きな波があった。V-BOYとメロコア・ブームでヒップホップ人口が下がった。
上野 全部持ってかれたよね。俺と一緒にスケボーやってたやつらも、バンドに流れていったもんなあ。「ふざけんなよ」と思った。
ブロンクス 〈AIR JAM〉とかマジで嫌いだったよ。「なんで俺ら日本語でやってるのに、あいつら英語でやってんだ?」っていうところからぶつかってた(笑)。
上野 英語なんかでやりやがって、ふざけんなって(笑)。
ブロンクス 俺にしても上ちよ(上野氏)にしても、あとTOKONA-Xもそうらしいんだけど、当時は〈俺のHIP HOPノート〉みたいなものを作ってたりして。「俺にとってのヒップホップとは~」とか「韻を踏むのはある意味制限だけど~」とか書いてた(笑)。純粋過ぎてマジで馬鹿。
上野 誓約書みたいに。ヒップホップに対しては真摯な態度で臨んでたよね。俺たちは遊びじゃねえんだよ! って思ってた。
ブロンクス それはまさにユウさんのスタンスだよね。
上野 『THE SOUNDTRACK '96』のレコーディング中って、弁当代が100万円超えたって、石田さん(ECD)が書いてたよね。たぶんスタジオにみんなが入り浸ってたんろうけど、そういう空気がアルバムから伝わってくるよ。“BLACK MONDAY 96”も、フィーチャリングが〈MICMASTERZ14〉になってる。いちいち名前を書いてない(笑)。マイクを2本立てて、その場で全部録ったりとか。そういうノリがすごい。
ブロンクス ユウさんは最初から最後まで一発で録るっていう伝説があるよね。3ヴァース目で失敗すると最初からやり直すっていう(笑)。でも、そうじゃないと出せない空気ってあるよね。
上野 確かに。俺も録ってて、疲れてきたくらいの時が、実は一番調子良いんですよ。ライヴっぽくなるというか。
ブロンクス 上ちよはそういうタイプかもしれないね。後継者。
上野 一発録りの後継者(笑)。いまの高校生と俺らの高校時代とはまったく世界が違うだろうね。いまだったら普通に〈PRO TOOLS〉とか使ってそうだもん。
ブロンクス 俺らはダブル・ラジカセでエア・チェック世代だもんね。あとテープのMTR。
上野 そう。ユウさんが言うことを信じてCOBYのプレイヤーとか買ってたよね。SONYじゃなくて。NYではSONYが買えないからCOBYなんだろうけど、こっちで買ったらCOBYの方が高い(笑)。それでも絶対COBY! みたいな感じだった。
ブロンクス 枝くわえた高校生がね(笑)。安いからすぐ壊れるけど、そういうものを使ってた。
上野 『THE SOUNDTRACK '96』は、いまの子が聴いたら、もしかしたら「ラップ下手じゃないすか?」って言うかもしれない。あと「なんのこと言ってるんすか?」とか。そういうことじゃないんだよな。
ブロンクス ユウさんはこのアルバムではスキル全開に聴こえないかもしれないけど、『TIGHT BUT FAT』の頃とか、すでにめちゃくちゃ上手いんだよね。その後、いまに至る喋りかける様なスタイルに移行していく。その途中だから、パッと聴いて驚くかもしれないけど、ちゃんと理解して聴けば下手でもなんでもない。
上野 初期の頃のスタイルもかっこいいすよね。レゲエDJ調というか。
ブロンクス やっぱKRSワンに憧れてた人だし、ラップのスキルをおろそかにする人ではなかったよね。KRSワンも途中から語り口調になっていったしさ。
上野 そこを正しくわかってもらいたいですね。ともかくこれはタイトル通り、俺らの過ごした96年のサントラですね。
ブロンクス おっいいね。キレイに締まったね。ということで、ブンバイバイHIPHOPネバダイ! HOLLA!!
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