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第22回 ─ PUB ROCK

連載
Di(s)ctionary
公開
2008/01/17   20:00
ソース
『bounce』 294号(2007/12/25)
テキスト
文/吾郎 メモ

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I パブ・ロックの成り立ちと特徴

 皆さん、こんにちは。今日のテーマは〈パブ・ロック〉です。その言葉からなんとなく想像できると思いますが、パブ・ロックとはもともとUKの大衆酒場(パブ)で演奏されるロックのことを指していました。労働者たちが仕事帰りに楽しむ場所で鳴らされていたロック──ということになります。パブ・ロックが台頭したのは70年代に入ってからで、それ以前のパブではトラッドやカントリー、ジャズなどが演奏されていました。ジャズを中心にしていたロンドンの〈タリー・ホー〉という店で、空き日の月曜にUSのバンドであるエッグス・オーヴァー・イージーがロックをプレイするようになり、瞬く間に評判を呼んでパブでもロックをやるスタイルが広がった……というのが起源とされています。そして、彼らに刺激を受けたバンドが徐々に増え、シーンが形成されていくのです。大仕掛けで会場も巨大化していったプログレやハード・ロックなどのメジャー・シーンとは対極にあるような、リズム&ブルースを下敷きにしたシンプルなロックンロールとカントリーなどを混ぜ合わせた演奏で、飲みに来たお客さんを踊らせるサウンド、それがパブ・ロックだと言えますね。

 70年代中盤になると、全英No.1ヒットを生み出したドクター・フィールグッドを筆頭に大きな人気を得るバンドが出現し、バンドはパブからホールへと舞台を移していきます。しかし彼らの音楽そのものは、パブ・ロックという名称で親しまれました。途中にパンク・ロックへとその流れの一部は引き継がれつつ、シーンの盛り上がりは80年代初頭まで続きます。かつての爆発的な勢いはないですが、その音楽性は現在でも世界中のロッカーたちに愛され、きっと今夜もどこかの酒場ではゴキゲンなパブ・ロックが繰り広げられていることでしょう。