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第21回 ─ SMOOTH JAZZ

連載
Di(s)ctionary
公開
2007/12/20   20:00
ソース
『bounce』 293号(2007/11/25)
テキスト
文/馬場雅之

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

I  スムース・ジャズの成り立ちと特徴

 今回の講義のテーマはスムース・ジャズですね。これはアメリカに数多くあるラジオ・キーステーションで人気の高い音楽フォーマットなんだ。そのサウンド・スタイルは明確に説明しづらいけど、サックス、ギター、キーボードなどがアドリブをあまり交えずに丁寧にメロディーを奏でている、都会的で甘美なジャズ系音楽、って言うことができるかな。

 ただスムース・ジャズって人によって解釈が異なるところがあるんだよね。ライトでまったりとしたフュージョンだと考えている人がいるし、アダルトなR&Bをスムース・ジャズとして捉える人もいる。また、AORやブラコン、クワイエット・ストーム系の作品までがいっしょに括られて語られてもいて、実際には〈スムースな感触があればOK〉って傾向があるんだよ。つまり、いろんなタイプのものがスムース・ジャズという〈捉え方のマナー〉で聴かれているのが実状なんだ。

 さて、この呼び名だけど、80年代の終わり頃にシカゴのFM局で使われたのが最初だと言われている。ラジオDJとリスナーとの会話のなかから生まれた、なんて説もあったりするね。で、その頃っていうと、聴き心地が良くてポップ度が高く、プラス先述のスタイルを持った作品を発表するジャズ系ミュージシャンが増えていたんだ。例を挙げると、ケニーGなどがそうだね。そんな彼らを括るのに〈スムースなジャズ〉という呼び名はピッタリとハマり、やがてアメリカの音楽業界紙においてチャートが設けられるまでとなった。こうして次第にひとつのシーンとして確立されていくわけさ。そして同様のテイストを持つ過去のアルバム、例えばジョージ・ベンソンが76年に発表したソフト&メロウな一枚『Breezin'』などが、クラシックとして再評価されていったんだよ。