III ブルース・スプリングスティーン・アンド・ジ・Eストリート・バンドのお手本バンドとライヴァル・バンド
最後に、Eストリート・バンドが手本にしたグループを紹介しておこう。まずはエルヴィス・プレスリー。彼のバックは鉄壁と言われていたし、雛形だな。ロックンロールはピンの歌手がいて、歌が中心なんだ。で、その歌を最大限に引き出すバック・バンドがいてこそ成立していた。ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツやバディ・ホリー&ザ・クリケッツをはじめ、チャック・ベリーやエディ・コクランもみんなそう。それが雛形なんだけど、リズム&ブルースやソウル・バンドも忘れちゃいけない。よく言われているのは、最強のバック・バンドはブッカー・T&ザ・MG'sかEストリート・バンドのどっちかだってこと。それはビートルズのようなロック・バンドって意味じゃなくて、ピン芸人をもっとも活かすプレイヤー集団としてだよ。
ちなみに、同時代でEストリート・バンドとタメを張るのは、クレイジー・ホースだ。ニール・ヤングはボスと同様に良い意味で独裁者。彼のような個性の強いシンガーを活かせるのはクレイジー・ホースだけなんだ。あとは、イアン・デューリー&ザ・ブロック・ヘッズもヤバイ。ファンクやロックンロール、リズム&ブルースを混ぜたものが実はいちばんイカしたパンクだってことを彼らは体現してるので要チェックだ。セックス・ピストルズだけがパンクじゃないぞ! とはいえ、これらはワルの音楽だから口に合わない人もいるだろう。本当のロックなんて知らないほうが幸せかもしれない。本物を聴いてしまうと、いまロックと言われているもののほとんどが全然ロックしてないってことが証明されてしまうからね。
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