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第15回 ─ ACID JAZZ

連載
Di(s)ctionary
公開
2007/07/05   16:00
更新
2007/07/05   17:59
ソース
『bounce』 288号(2007/6/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

Ⅰ アシッド・ジャズの成り立ちと特徴

 はい、本日の講義は〈アシッド・ジャズ〉。最近また耳にする機会の多い言葉だけど、ジャズと言いつつジャズでもないというニュアンスは、昨今のリスナー諸君にはあんまり知られてないようだね。そこ、テキストの〈ジャズ〉の頁を見てるキミは〈レア・グルーヴ〉の頁を開けなさい。アシッド・ジャズの下地になったのは、そのレア・グルーヴという考え方を主にロンドンで推進したエディ・ピラーやジャイルズ・ピーターソンといったDJたちの、ソウルやジャズをダンス音楽として復権させた選曲マナーなんだからね。同様に〈ジャズ・ダンス〉を標榜したポール・マーフィもそこに連ねるべきだろう。そこに、60~70年代ソウル/ジャズ・ファンクの復古を推進していたモッド・リヴァイヴァル系バンドの動きがシンクロしたってわけ。これが80年代半ばのことだ。呼称自体はアシッド・ハウスに掛けたシャレのようなもので、別にアシッド音楽じゃないんだよ。考案者はジャイルズとされているけど、異説も多いね。まあ、彼の主催する〈Talkin' Loud, Sayin' Somethin'〉などのパーティーでその言葉が広まったのは事実だろう。で、先述のエディとジャイルズはアシッド・ジャズ・レーベル(以下AJL)を共同で興し、さらに90年にはジャイルズが新たにトーキン・ラウドを設立。この2大レーベルを柱にムーヴメントは一気に表面化していったんだ。サウンド的には70年代のソウルをクラブ的に解釈してジャズ・ファンクやラテン音楽の要素を加える人たちが多かったけど、USやフランスのジャズ・ラップなど新手のクラブ音楽と多様にリンクすることで、その定義は不明瞭になっていく(ルーツやDJ KRUSHもアシッド・ジャズに括られることがあったんだ)。まあ、もともと音の傾向を示す言葉じゃなく、場のムードや時代のモードを表す言葉でもあるから当然なんだけどね。