「溜まりに溜まったものが吹き出した」とみずからも語るCOM.Aの新作『COMING OF AGE』。吹き出したものは爆発的なポップセンスであり、破壊的な美学であり、デタラメで繊細なサウンドスケープだ。しかし、かつてのファースト・アルバム『DREAM AND HOPE』以上に(まるでジャケを飾る巨大ミドル・フィンガーのように)突き抜けたこの〈デビュー・アルバム感〉はどうしたことか。彼も「〈ここからがスタートだ〉っていう意識はありますね」と話す。
「(前作から)4年も経っちゃいましたからね(笑)。前は社会をナナメに見てたんだけど、いまはナナメでも期待を込めて見てるんですよね。今回は凄くオープンな気持ちで作れたんです」。
9歳の頃、アメリカに住んでいたCOM.A少年はスラッシュ・メタルに衝撃を受けて音楽にノメリ込んでいる。その後、フェイス・ノー・モアなどを聴いた後にエイフェックス・ツインで一気にフロア・ミュージックの世界に突入。音楽制作を開始すると、実兄であるJoseph Nothingとのユニット=ROM=PARIや、数々のリミックス/トラックメイクで海外にもその名を轟かせていった……そんな彼の音楽遍歴が、荒唐無稽なエンターテイメントのように綴られているのが今作だ。それにしても、凄まじい活力に満ちたこの音といったら!
「〈何かが終わって何かが始まる〉、そんなイメージを込めたタイトルなんです。地球レヴェルでの問題とか、自分の個人的なこととか、ROMZのことも含め」。
また、「6曲目までがいままでの自分で、それ以降が成長した自分だと思ってて」と話すように、今作はCOM.Aの〈これまで〉と〈これから〉をくっきりと提示している(そのなかで、Kiiiiiiiがパンクな歌声を披露したりも)。が、たっぷり時間をかけ、納得できるものを出せるROMZという城なくしては、こうした規定外のスケール感を持つ作品は生まれ得なかったのでは?
「そうですね。嬉しいのは、SHIROくんがちゃんとダメ出ししてくれるんですよ。彼の意見でアルバム一枚分をボツにしたこともあるし、僕の育て親っていう意識もありますね」。
なお、この『COMING OF AGE』はアジア各国でもリリースされる予定だという。エレクトロニック・ミュージックの黎明期であるアジアで今作がどのような成果を残せるか、そちらにも期待したい。
▼COM.Aの過去作品を一部紹介。
2002年作『DREAM AND HOPE』(ROMZ)