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第122回 ─ ジャズマタズ復活で再注目のジャズ・オン・ザ(ヒップホップ)コーナー

DJ DREZ & MARTY WILLIAMS

連載
360°
公開
2007/06/14   19:00
ソース
『bounce』 287号(2007/5/25)
テキスト
文/出嶌 孝次


 DJと演奏家のコンビはそう珍しいものではないし、出音がある程度想像できるという人もいるかもしれない。が、このDJドレッズとマーティ・ウィリアムズのコラボ作品『The Complete Moon Bay Sessions』は、いわゆる〈ジャジー系〉の硬直したフォーマットに帰結するものではなく、何と言うか……〈ジャズ〉なのである。初期ブラック・アイド・ピーズのDJを務めたドレッズは、サンフランシスコを拠点にアノニマスやアブストラクト・トライブ・ユニークのメンバーとして活動。バハマディアやリヴィング・レジェンズらの作品にトラック制作やスクラッチで参加する傍ら、2003年にはソロ作『The Capture Of Sound』も残している。同作収録の“Illusions Hush”で地元のジャズマンであるマーティがピアノを演奏したことからこのコラボは始まったのだ。2年前のEP『Moon Bay Sessions』の収録曲も含む今回のフル・アルバムは、ビリー・ホリデイ“Don't Explain”の絶品カヴァーなどの引っ掛かりも交えつつ、MC入りの曲もインストも等しく雄弁な仕上がりとなっている。モーダルなスウィングからヒップなファンクまでを包括した彼らの〈ジャズ〉は、〈極上〉とかいう安易な形容では測れない、ビター・スウィートな大人のヒップホップである。多くの人が手に取るべきだ。