Ⅲ その後の流れと、現在の音楽シーンに見るブラコンの影響力
〈オルタナ〉が正道になったり、フュージョン/クロスオーヴァーが様式化して名が体を現わさなくなっていったのと同様に、ヒップホップが台頭してきた80年代末になると、皮肉にもブラコンのサウンドは現代的じゃなくなっていくわけだ。とはいえ、ホイットニー・ヒューストンやピーボ・ブライソン、レジーナ・ベル、初期のマライア・キャリーなど、90年代に世界的な成功を収めた正統派のR&Bシンガーたちが80年代以上にブラコンっぽい音世界を披露していたのは皆も知ってのとおりだな。
一方、ストリート寄りな〈ニュー・ジャック・スウィング〉の流行がブラコンを駆逐した後、90年代序盤の〈ヒップホップ・ソウル〉以降は、サンプリングによってブラコンが見直される機会が逆に増え(ノトーリアスBIGの『Ready To Die』は象徴的だった)、それは現在に至るまで顕在化している。これはブラコンを聴いて育った世代がプロデューサーやパフォーマーとして最前線に立ったことが大きいんだろうな。それとは別の流れでブラコン人気の高い日本では、90年代末までR&B=ブラコン的なサウンドだとされてきた。
角松敏生や鈴木雅之は言わずもがな、近年ではEXILEやSOUL'd OUTがブラコン度高めかな。サウンド面だと、ある種のハウスやエレクトロ、ディスコ・ダブなどなど、ディスコや80'sの滋養を掘り下げているダンス・アクトたちへの影響も実は多大。チキン・リップスの近作なんて、四の五の言う前に〈ブラコンっぽい〉の一言で片付いてしまうんだけどね……。
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介