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第47回 ─ アンプラグド

〈MTV Unplugged〉からの最新リリースは……何とアリシア・キーズ!!

連載
Discographic  
公開
2005/11/17   16:00
ソース
『bounce』 270号(2005/10/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

 「ライヴ・パフォーマンスの醍醐味は〈即興性〉ね。次に何が起きるかわからないでしょ? 毎日が新しくて、すべてが違うから」。

 こう語るアリシア・キーズ初のライヴ盤は、まさにハマリすぎの組み合わせとも言うべき〈MTV Unplugged〉から誕生した『Unplugged』。以前『Songs In A Minor』を新装リリースした際にアンプラグド・セットのライヴ音源も少し収録されていたが、今回は正真正銘のフル・アルバムとなる。

「過去に2枚アルバムを出して、ライヴ・アルバムをやってみることはとても重要だし、ずっとやりたいと思っていたわ。ある特別な瞬間を記録するものだし、いつまでも記憶に残るものだから。ダニー・ハサウェイのライヴ・アルバム……あのフィーリングが大好きなの。だから、自分も作ってみたかった。MTVに尋ねたら〈Unplugged〉はもうやらないって言われたんだけど、ぜひやらせてほしいって頼んで、再開してもらったの。いままでたくさんの素晴らしいアーティストたちが出演した〈Unplugged〉のリストに自分の名前が入るのは光栄よ」。

 ちなみに彼女が好きな〈Unplugged〉盤はニルヴァーナのものだそうだ。肝心の内容は、ツアー・メンバーをバックに、自身はもちろんピアノを担当。ストリングス・クァルテットや、ホーン、パーカッションの数々も、ソウルフルなパフォーマンスをダイナミックに盛り上げる。数々のヒット曲を意外なアレンジで聴かせるのはもちろん、マルーン5からアダム・レヴィーンを迎えて「2人とも好きだった曲」だというローリング・ストーンズの“Wild Horses”をサザン・フィーリングたっぷりにデュエット。他にも、ブレンダ・ハロウェイの“Every Little Bit Hurts”をしっとりカヴァーして、さらにはダミアン・マーリーとモス・デフ、コモンを交えてダミアンの“Welcome To Jamrock”で大団円を迎えるのだから……何とも豪勢だ。そのうえ新曲まで聴けるわけで、これはほとんど新しいオリジナル・アルバムと捉えても構わないだろう。

「みんなが親近感を持ってくれることが大事だと思ったわ。その瞬間にパッションを感じてほしかったの。情熱的で、堅苦しくなくて、心を込めたショウがやりたかった。あまり見ることがない私を見てもらいたかったのよ」

 なお、ショウの最中のMCでは〈昔はもっと小さなハコでライヴをやっていた〉とも話したアリシア。豪華なセットでありながらも、今回の〈Unplugged〉は奇しくも彼女に自身のルーツを見つめ直させるものとなったようだ。

「そうね。活動を始めた最初の頃は、ピアノ一台だけで小さなホテルやクラブでライヴをしていたのよ。そういう場所でのショウは自分だけの力でオーディエンスを楽しませなきゃいけなかったのよね……」。

 こうやって、図らずも自身の足下を見つめ直した彼女。来るべきサード・アルバムについて「もしかしたら、今回の新曲がアルバムの方向性になるかもしれないけど、まだわからないわ」と意味深な発言も残してくれた。その答えを受け取るまでは、この最高にソウルフルな『Unplugged』を楽しむとしよう。
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