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第47回 ─ アンプラグド

第47回 ─ アンプラグド(3)

連載
Discographic  
公開
2005/11/17   16:00
ソース
『bounce』 270号(2005/10/25)
テキスト
文/加賀 龍一、佐々木 俊広、出嶌 孝次、まちだゆうき

MAXWELL
『MTV Unplugged』
 Columbia(1997)
 デビューからアルバム1枚を経て登場したEPサイズの快作。精緻な空間処理を凝らしたスタジオ作のエロくてアーバンな雰囲気を、ここではそのまま温かい躍動に転換させている。ケイト・ブッシュ“This Woman's Work”のカヴァーは納得のチョイスだが、ナイン・インチ・ネイルズ“Closer”のカヴァーにはビックリ。ホーンが轟く小気味良いファンク・アレンジがカッコ良すぎる!(出嶌)

ALANIS MORISSETTE
『Alanis Unplugged』
 Maverick/Warner Bros.(1999)
 デビュー作『Jagged A Little Pill』のアコースティック・リメイクも最近リリースしたばかりのアラニス。この〈Unplugged〉では、原曲に込められた怒りや衝動は削ぎ落とされたが、一方で曲そのものの瑞々しさは前面に押し出されていて、〈やさしいアラニス〉の豊かな表現力が浮き彫りになっている。〈女性力〉を象徴するかのような堂々のパフォーマンス。(加賀)

SHAKIRA
『MTV Unplugged』
 Columbia(2000)
 英語アルバムで世界的にブレイクする前の、よりラテン・ポップス・マナーに沿った〈聴かせる〉ナンバーを多く取り上げて、その当時のレパートリーの魅力を十二分に引き出した本作。根はロック少女の彼女が、ここまでコテコテなラテン丸出しアレンジで歌うのも珍しいです。お馴染みのベリーダンス・ナンバー“Ojos Asi”の生々しさったらもう! (佐々木)

宇多田ヒカル
『UNPLUGGED』
 東芝EMI(2001)
 メガ・ヒットを連発していた全盛期のシンプルにしてゴージャスなライヴの模様やメイキング映像が楽しめるDVD。イントロだけで場内が歓声に包まれる“First Love”、ゆったりとアレンジされた“Addicted To You”などが披露されるなか、出色はU2のカヴァー“With Or Without You”と、優美なピアノでメロディーの繊細さが引き出された“Automatic”。客席がソファに入れ替えられるなど、親近感を強調したプライヴェート・ルーム風のセットもいい感じだ。(出嶌)

ALEJANDRO SANZ
『MTV Unplugged』
 Wea(2001)
 スペイン人初となる〈MTV Unplugged〉出演を果たした色男、アレハンドロ・サンス。毎回、オリジナル・アルバムではいろいろ採り入れたがる新しもの好きの彼ですが、ここでは10年に渡るキャリアの中から選りすぐられた刹那系バラードばかりをチョイス。アコースティックになったことでその歌声も色気を増して迫りくる。〈プラグをア~ン〉なジャケもいい感じ! (佐々木)

JAY-Z
『Unplugged』
 Roc-A-Fella/Def Jam(2001)
 バックの演奏がルーツ、ストリングス隊はラリー・ゴールド他、さらにジャグアー・ライトのコーラス、スクラッチの口技……とフィリー軍団を従えた豊潤な仕上がりで、ヒップホップのライヴ盤としても最高水準の一枚かも。その年のアンセムだった“Izzo(H.O.V.A.)”で幕を開け、メアリーJ・ブライジやファレルらも迎えながらベスト・ヒットを巧みに生再現。観客のリリック合唱が凄い“Ain't No Nigga”など初期曲の反応がいいのは、地元NY収録ならではのグッド・ヴァイブ。(出嶌)

DASHBOARD CONFESSIONAL
『Unplugged V2.0』
 Vagrant(2002)
 オットコ前エモ歌人=クリス・キャラバの、恐らく番組史上最高の〈出演人数〉であろう記録的ステージ。オープニングからラストまで、とにかく観客が歌う歌う。最小限の楽器で演奏される〈Unplugged〉も、クリス君の手にかかれば観客参加の〈合唱プラグド〉に早変わり! 聴いているこっちもついつい口ずさみたくなっちまうのだ。(加賀)

BJORK
『MTV : Unplugged & Live』
 One Little Indian(2002)
 94年の〈Unplugged〉と98年の〈Live N' Loud〉というMTV絡みのライヴ映像をパックしたDVD。ソロ・デビュー間もない時期に収録された前者はタルヴィン・シンのタブラなどを従えたユニークなパフォーマンス。自信たっぷりにオーラを出しまくっている後者と観比べるのも楽しいが、やっぱりビョークは初期の不思議な佇まいが良いね。(出嶌)

LAURYN HILL
『MTV Unplugged No.2.0』
 Ruff House/Columbia(2002)
 終曲に夫のロハン・マーリーが登場する以外は完全なる独り舞台で、ボブ・マーリー“So Much Things To Say”などのカヴァーを除けばほとんど自作の新曲で固められた2枚組。ギターを抱えた彼女が歌詞を間違えたり声が嗄れたりしつつもひたすら歌い、ラップし、オーディエンスに話しかける生々しい様子には感動を禁じ得ない。なお、ハイライトとなる“Mystery Of Iniquity”はカニエ・ウェスト“All Falls Down”に引用された。(出嶌)

平井 堅
『MTV UNPLUGGED KEN HIRAI』
 DefSTAR(2003)
 日本人初、NYでの〈Unplugged〉収録を敢行した〈歌バカ〉のDVD。“You've Got A Friend”やニヴェアを迎えた“You Are The Sunshine Of My Life”など英語詞のカヴァーも交えながら、“KISS OF LIFE”や“楽園”などの定番ヒットも雰囲気モノのアレンジで巧みに聴かせる。昂揚感に溢れた“Love Love Love”での結びも熱い。(出嶌)

THE CORRS
『Corrs Unplugged』
 Atlantic(2003)
 アイルランドの美形兄妹による2003年の〈Unplugged〉。アイリッシュ・トラッドというルーツを活かしたアコースティックな形態は、まさに自身の土俵で展開される横綱相撲そのもの。最新作のトラッド・アルバムでも披露していたアイルランドの英雄=故フィル・ライノットの“Old Town”のしっとりとしたカヴァーもお見事の一言。(加賀)

GIORGIA
『MTV Unplugged』
 BMG Italy(2005)
 おわ~、この人ってこんなにソウルフルだったっけ? イタリアの人気女性シンガー、ジョルジアの最新作。リッキー・ファンテの豪放すぎる歌声をフィーチャーしたマーヴィン・ゲイ“I Heard It Through The Grapevine”をはじめ、スティーヴィー・ワンダー、スモーキー・ロビンソンのカヴァーなど、普段は厚化粧気味の彼女のナチュラルなスッピン顔が拝めちゃいます。(佐々木)