で、〈nbsa+×÷〉とは……
昨年開催されたイヴェント〈nbsa+×÷〉が今年も来る10月9日に開催されます。場所は昨年と同じく渋谷の〈O-EAST〉で、題して〈nbsa+×÷ VOL.2〉。今回はその開催に合わせたコンピ『nbsa+×÷~自然発火~』もリリースされるということで、首謀者たちのなかから三宅洋平(犬式)、大竹重寿(cro-magnon)、Keycoの3人に話を訊いてみました(イヴェントの詳細はbounce.com内タワーインフォメーション記事を確認してください!)。
――そもそもの始まりはどんな感じで?
三宅「言い出しっぺはシゲですね、一昨年の暮れぐらいに、吉祥寺の〈スターパインズカフェ〉でライヴをやった時に、シゲが(椎名)純平とかと来てて、〈熱いヤツがいたら紹介してくれよ〉っていうお決まりのセリフでね。熱い連中とイヴェントがやりたくて〈O-EAST〉をもう押さえてある、って。その前からSOIL&“PIMP”SESSIONSとLoop Junktionとは交流があったけど」
大竹「その頃は今年みたいに夏フェスとかに出てなかったし。じゃあ、自分らでやろうって思って。出させてもらうんじゃなくて、自分たちでデカくしていけるようなイヴェントが年に1回あったら楽しいしね。でも結局くっつくんだよ、おもしろいヤツって」
三宅「SOILもそうだったけど、同じハコでライヴやった時にお互いの演奏に客としてヤラれて、終わった瞬間にグワッと握手して。そう思えるヤツらが自然に集まった」
大竹「今年はSPECIAL OTHERSとBAGDAD CAFE THE trench townが出演メンツに入るけど、あいつらも対バンして〈いいバンドだな~〉って思ったのがきっかけだし」
三宅「で、200人が10年で2万人になったっていう〈横浜レゲエ祭〉の話をRYO(the SKYWALKER)くんとかに聞いて、そういう年に1回、自分らがどこまできてるか確かめる場っていうのがオレらにはなくて、そういう場になるといいと思って。Loop Junktionもそうだったしね。いわゆるBボーイ向けじゃなかった。SOILもジャズ伝統保存協会のオタクには〈あんなのジャズじゃねえ〉って言われてるしね。みんなそうだよ、後付けだけど。〈nbsa+×÷〉はオレ的には〈偉大なるその他の集まり〉です」
Keyco「〈その他〉って格好いいと思うんだよね。オリジナルであるぶん、そのヒトが見えるし、そういうものに魅力を見い出せる連中が〈nbsa+×÷〉には集結してる」
三宅「だから、ふだんクラブに行くような人とライヴハウスにしか行かないような人たちが客席で混じり合っていくことでなんか影響を与え合っていくといいね」
Keyco「いまはリスナーでもコアな人とそうじゃない人の差が凄くあるから、できることならマスの人たちもいま知らない音楽に触れることでその格好良さを知っていってほしいな」
大竹「オレは〈nbsa+×÷〉をそこまでコアだとは思ってないけどね」
Keyco「でも、日本の音楽全体から見るとそういうことになるじゃない? だから、シーンにも〈nbsa+×÷〉にも急激な成長を望んではいない。演る側も敷居を低くするんじゃなくて、スキルが落ちたら出られないぐらいの切磋琢磨し合う環境が素敵だと思うし」
三宅「そう、居心地の良さに溺れたくもなくて、常にカオティックな状態にしておきたい」
――〈nbsa+×÷〉に求められるスキルっていうのは?
三宅「単なる〈上手さ〉とかじゃなくて、自分が自分として生まれてきて自分を表現するために理想となるところを見定めているかどうか、それがオレの考えるスキルですね」
大竹「単に上手いだけのキレイになりすぎたものってハートに来ないしね」
三宅「オレは単純にKeycoとか(有坂)美香ちゃんとか凄えなあって思うんだけど、地球上でその人にしか歌えない歌がある。それは声だけじゃなく、弾くのでも書くのでも全員持ってるはずなんです。そこを見つけた人は幸せだと思うんだ。だから〈nbsa+×÷〉に来た人全員が自分の最強の魅力に気付くといい。U・ロイが昔言ってたのは、〈自分が持って生まれたキーをちゃんと認識して、自分が歌えるゾーンで歌うことが上手い歌を歌う方法だ〉って。まあ、U・ロイが上手いかっていうとアレなんだけど(笑)、凄くわかる話なんだ」
Keyco「自分をリスペクトすることに繋がっていくと思うけど、自分を肯定できると、声がまっすぐに出てくるんだよ。マフラーで言えば直管だよ」
大竹「(笑)なぜマフラーで例えるのかわかんないけどさ」
三宅「凄えパンチラインだな(笑)。これで生まれが福生ったらさ、青梅街道通って出撃して……(以下略)」
――ともかく、仮に敷居が高くても、入口の数は凄く多いイヴェントですよね。
Keyco「それと、私は凄く同じ匂いのする人が集まってるように思う。観る側も演る側も嗅覚で生きてる人たちが自然に集まってるというか。〈RSR〉とか行った時もさ、空港でバンドが何組も待ち合わせしてるんだけど、うちらの空気感とか、何か明確な匂いがあるんですよ」
三宅「本当は何かがハッキリあるんだよ。大阪だとcopa salvoとかBAGDADとか、オーサカ=モノレールも韻シストもそう。濃いことやろうとしてるシーンがもう自然にあるんだ。ドープでもありたいけどポップでもありたいっていう……オーヴァーグラウンドとアンダーグラウンドとか、ライヴハウスとクラブっていう分け隔てがなくなる、その融解点が〈nbsa+×÷〉かもしれないね」