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第14回 ─ 夏の終わりの楽園フェス〈RAW LIFE〉駆け足レポ!!

連載
オレらの 夏 フ ェ ス 予習・復習帳 04
公開
2004/09/24   15:00
更新
2004/09/28   11:35
テキスト
文/bounce.com編集部

9.11(土)、12(日)に新木場・夢の島マリーナで開催された夏の終わりの楽園フェス〈RAW LIFE〉。4つのステージで繰り広げられる豪華DJとライヴは、日本の音楽シーンのエッジーな部分を集約したような出演陣+前売り2,500円という低料金etcが話題を集め、新参フェスにも関わらずソールドアウトを記録! 最高のロケーションでフェスを楽しむオーディエンスのユルいヴァイブも手伝って、素晴らしい雰囲気に満ちていた当日の模様を駆け足で紹介いたします。

9.11(土) まずは怒涛の前夜祭レポ!(peechboy~EYE~DJ HANGER~KENT~DOEL SOUND FORCE&FRIENDS~サイプレス上野とロベルト吉野)


 〈RAW LIFE〉前夜祭の新木場・夢の島マリーナの状況は、万事快調! とは言い難いものだった。ちょいと調べればわかる話だけれど、会場前で当日券が買えずに警備員とギリギリの駆け引きを繰り広げた知人がいたし、会場側と主催側は実はモメモメだったという話も後日見聞きした。ただ、幸か不幸か、不安要素の多いパーティのほうがむしろ最高の磁場を生み出してしまったり……というわけで、文字通り〈狂乱〉の前夜祭の模様を駆け足で。


EYE

 会場にようやく入りメイン・ステージ〈GRASS STAGE〉に向かうと、京浜エリアを拠点に活動するサウンド・システム部隊/DOEL SOUND FORCEが誇る俊英、peechboyがDJ中。独善的な解説が許されるならば、彼はおそらくシカゴの伝説的DJ、故ロン・ハーディの異端な継承者の一人。ヘッド・バンキングをしつつダンス・クラシックスからクリック・ハウスまでを、恐ろしく大胆なイコライジング、エフェクトと共に繋ぎ込んでいく。ビッグネームではないDJが観客の気分を高揚させていく、そんな申し分のない序盤戦。30分遅れて到着したEYEにバトンタッチすると、前者の流れを受けてこちらもディスコティークなハウス・セット。〈はやく戦争が起きてほしい〉と10数年前には語っていたという元ハナタラシの方が、2004年9月11日にラヴリーなディスコセットをかましてくれる。なんというか……凄い。

 続いて、オルタナティヴ(!?)なラインナップが揃う〈RAW STAGE〉のテントに移動すると、異色スクラッチ世界王者、DJ HANGERがプレイを始めようとしていた。HANGERの何が異色かといえば、例えばガバやハードコア・テクノのような、皆が(おそらく同業のターンテーブリストがとくに)ダサいと思っているような素材を高度なスクラッチ・テクニックで料理することでその価値観を逆転させてしまう点。ヴォーカルだらけのビョークの新作『Medulla』のジャグリングで幕をあけたと思ったら、DVDJを使ってHANGER自身が卓球に興じている映像素材をコスりまくる。大ヒット・トライバル・テクノのケイヴ“Street Carnival”のブレイクではサンバのリズムにあわせて、件のピンポン映像を〈カコココン! カココココン!(意味不明でごめんなさい)〉といったユニゾン仕立てでスクラッチを披露。彼はターンテーブリストの宿命ともいえる〈毎回同じルーティン技を披露していると、観客が飽きてしまう〉という課題を、ジャンルを跨いだ柔軟な発想で切り抜けているような気がする。


DJ KENT

〈GRASS STAGE〉に戻ると、FORCE OF NATUREの二人、KZAとKENTがブースで腰を揺らしながらDJミキサーをイヂっている。この方々(とくにKENT)はとにかくベースラインの引き出し方を心得ている、俗っぽい言い方をすればBボーイ・ハウス。ブレイクビーツの音像を極めた男たちが120BPM周辺であらゆるダンス・ミュージックを繋ぎ込んでいく様は圧巻。アフロ・ビート直系のパーカッションだけのトラック、ロック・テイストなディスコ・ナンバーなどをまじえつつ、リル・ルイスの変態ハウス・ナンバー“French Kiss”が意外と東京湾の景色にハマることに唖然としたり。


MONOLITH feat. 冠位十二階

 で、午前4時ちかくに再び〈RAW STAGE〉に戻ると、テント内は凄まじいことになっていた。DJブースでは素っ裸のDJが、DJファンクなどのオールドスクールなアシッド・ハウス/トラックスをかけている。観客は携帯電話のカメラをブースに向けて、ニヤニヤしながら踊っている。やがてブースにいる素っ裸の男は三人に増えて、DJの隣で踊る全裸の男が手動のサンプラーを使ってDJの名前を連呼する。「モーノリスー!モノリス!モノリス?」。DOEL SOUND FORCE軍団の友人、モノリスがDJをしているようだ。あっけにとられていると、今度はラップトップを片手にゲットーベース屋、KESがライヴ・セットを始めた。あらゆるアカペラを、あらゆるエレクトロ・ビートをマッシュして次々に展開していく高速ベース・ライヴは圧巻。明らかに狂った空間なのに観客が全くヒカないあたり、当夜は会場ともども本格的にネジが外れていることに気づく。KESのインサートする声ネタに、観客の〈ビッチ・コール〉の連呼が続く。こうなると、もう手遅れ。最高に卑猥な〈RAW STAGE〉に朝まで付き合うことに。

 というわけで当夜、〈RAW STAGE〉最高潮の盛り上がりは明け方5時すぎにやってきた。神奈川からきたMC&DJ、サイプレス上野とロベルト吉野のライヴ。なんと形容すればよいか……浅草フランス座のランDMC? 場外馬券売り場のビースティー・ボーイズ? とにもかくにも彼らは幼稚で、破天荒で、素晴らしいパフォーマンスをみせた。ストリップ劇場の呼び込み音源から始まり、MCのサイプレス上野は椅子の上に立ち会場を見下ろしながら角瓶のウィスキーをガブ呑みし、初期衝動全開のオールド・スクール・スタイルなMCで盛り上げる。ビヨンセの“Crazy In Love”にのせて〈女喰って、女喰って、女喰って、女喰って…あー、なんて音楽って素晴らしいんだ♪〉とコールする姿は、冷静に振り返ると馬鹿馬鹿しいのだが、その馬鹿馬鹿しさが絶妙なバランスでエンターテインしていて(ロベルト吉野のDJテクニックは一級品!)、熱っぽい、素晴らしいライヴだった。*RAW原田