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第4回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL〉予習ディスク・ガイド

第4回 ─ 〈FUJI ROCK FESTIVAL〉予習ディスク・ガイド(3)

連載
オレらの 夏 フ ェ ス 予習・復習帳 04
公開
2004/07/22   19:00
更新
2004/09/24   19:53
ソース
『bounce』 999号(0/0/0)
テキスト
文/bounce.com編集部

8月2日(日)に出演するアーティストの作品を紹介

あぶらだこ
『あぶらだこ』
Pヴァイン(2004)

  結成からなんと20年。つねにあぶらだこであり続けたあぶらだこの最強にあぶらだこな新作。変拍子が頭を下げるほど躓き倒したリズム。ベースはたこ踊り。ギターは突如火を吐いて黒こげになる。そしてトドメは長谷川裕倫の天下無双のヴォーカル力。そのねじ曲がった喉から飛び出してくるニヒリズムと慈しみの手強いこと。突然、〈みーん、みーん〉と鳴いてらっしゃいますが、その背後の静けさに背筋が凍った。(村尾 泰郎 / 2004/05/25掲載)

MUM
『Summer Make Good』
Fat Cat(2004)

  アイスランドの東北部、大洋とデコボコした海岸に囲まれた灯台内で制作されたムームの新作。録音地を想像するとなんだか凍えそうになるが、アナログ機器で編集され、自然のざわめきが加味された音には、パチパチはぜる焚き火のような暖かさがあるのでご安心を。そして、妖精クリスティン・アンナの幻想的な歌声といったら、もう! 再生した瞬間に広がる音風景に、思わず息を呑むこと必至の絶景エレクトロニカ・ロック!!(狩野 卓永 / 2004/03/25掲載)

サンボマスター
『新しき日本語ロックの道と光』
MASTERSIX FOUNDATION(2003)

  とにかく全力なライヴ・パフォーマンスで話題沸騰中の3ピース・バンドの初となるアルバムが完成。ソウルとリズム&ブルースと情熱と男汁をたっぷり注入し、ぐつぐつ煮込んだハンドメイドのロックが全10曲。最後まで聴き終えて、このものすごいアルバム・タイトルがジョークでもハイプでもないことを痛感しました。3人は本気です。人間味溢れる歌&演奏、そして詩情豊かな日本語詞に、ぜひ心を突き動かされていただきたい。(大野 貴史 / 2003/11/25掲載)

!!!
『Louden Up NOW』
ビート・レコーズ/WARP(2004)

  ラプチャーやDFAの大ブレイクで、ロック・ファンだけでなくダンス・ミュージック好きからも注目を浴びるUSポスト・パンクの大本命、チック・チック・チック。そんな彼らの新作がなんとワープからリリースされる! ブルックリンを拠点とするダブ・パンク・バンド、アウト・ハッドのメンバー3人(なかでもタイラー・ポープはDFAのジェイムス・マーフィーのソロ・ユニット、LCDサウンドシステムでドラムスも担当)を中心に結成された7人組による今作は、先行シングルとしてリリースされ大反響だった強烈ダブ・ファンク“Me And Giuliani Down By The School Yard(A True Story)”、怒濤のファンク・パンク“When The Going Get Tough, The Tough Get Karazzee”、クールなハウス・チューン“Dear Can”など、まさにトーキング・ヘッズの80年作『Remain In Light』の最新アップデイト版! 現在最強のホワイト・ファンクだ!(石田 靖博 / 2004/05/25掲載)

THINK OF ONE
『Chuva Em Po』
ボンバ(2004)

  8月に来日も決定した、ワールド・ビートと格闘する楽団、シンク・オブ・ワン。モロッコに続いて彼らが選んだテーマは〈ブラジル〉だ。ブラジル北東部のレシーフェを舞台にして制作されたそのサウンドは、土着的だが乾いた都会の匂いがするもの。スピリチュアルなビリンバウの音色と重量級のエレクトロ金管グルーヴが、奇妙で広大なブラジリアン・サウンドスケープを彩っている。メストリ・アンブロージオのシヴァもゲスト参加。(長屋 美保 / 2004/03/25掲載)

BELLE AND SEBASTIAN
『Dear Catastrophe Waitress』
Rough Trade(2003)

  ベル・アンド・セバスチャンの5作目にあたるスタジオ・アルバム。レーベル移籍やトレヴァー・ホーンとの初タッグといった変化もなんのその、素晴らしく心地良いサウンドがいままで以上に響き渡り、史上最高の出来映えを思わず確信。際立つメロディーと和み感溢れるアレンジ、そして彼ら独特のフィーリングは、時と場所を選ばずいつでも新鮮に伝わってくる。このサウンドに有効期限や賞味期限なんてありえない。(奥本 啓輔 / 2003/09/25掲載)

渋さ知らズ
『渋星』
地底レコード(2004)

  渋さ知らズにマーシャル・アレン、マイケル・レイ、エルソン・ナシメント、つまりサン・ラー・アーケストラ組が合流!!──と、そんなニュースに狂喜乱舞する若人も少なくないだろうが、スタジオ録音作としては8年ぶりとなるこの新作、ちょっとトンでもないことになっている。アーケストラ組は不参加ながらも“Images”“Space Is The Place”というサン・ラーの代表曲のカヴァーでの、聴くものを阿鼻叫喚へと導くカオティックな世界がまずトンでもないけど、バルカン・ブラスがプログレ・バンドと共に日本海に身投げするかのような“Naadam”などマジでトンでもない。ジャズと御柱祭と〈ええじゃないか〉と任侠映画がバランスを崩しながら一枚の作品に集結し……って書くとよくわからんが、とにかくその興奮はパンクスにこそ体験してもらいたい類のもの。ただバカ騒ぎしているだけじゃなく、周到に泣きどころが用意されているのもニクい。(大石 始 / 2003/12/25掲載)

THE WHITE STRIPES
『Elephant』
V2レコーズ(2003)

  近年の原初的なロックンロール回帰風潮のなかで脚光を浴びた紅白姉弟デュオの4作目。相変わらずアイデア豊かなコンビネーションと凶悪なインテリジェンスで、気持ち良く針をレッドゾーンに振り切ってくれる。ベックが彼らの前作を昨年のベストに選んだそうだが、考え抜いて自分の音楽をやるベックからしたら、それこそ姉弟間の〈テレパシー〉にも似た交感作用と、ギター/ドラム/歌という最小限の設定だからこそナチュラルに醸し出され、聴く者を巻き込んでしまうこの〈レア〉なグルーヴ感には、嫉妬を覚えざるを得ないのだろう。バート・バカラックのカヴァー“I Just Don’t Know What To Do With Myself”は、かつてエルヴィス・コステロも歌った必殺の一曲。それにしても、この2人。ほかのデトロイトの連中にはない、50年代のガレージR&Bからワープしたような、生臭い匂いがするのが本当に魅力的だ。(松永良平 / 2004/04/25掲載)