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第21回 ─ ジャパノヴァ

Smokey and Miho チボ・マットの羽鳥美保による〈NY流〉ボサノヴァ

連載
Discographic  
公開
2003/11/20   13:00
更新
2003/11/20   17:05
ソース
『bounce』 248号(2003/10/25)
テキスト
文/駒井 憲嗣

「土っぽさや、直線じゃなくて、葉っぱのまるみとか、完璧なものじゃない自然に近いイメージを音楽に感じたかった」――そう語るのは、チボ・マットの羽鳥美保(発言:以下同)。かねてから、チボ・マットとしての作品、あるいはショーン・レノンの『Into The Sun』などで、ブラジル音楽からの影響を随所に露にしてきた彼女が、Smokey and Mihoというユニットとして、アルバム『人間の土地』をリリースする。メンバーであるスモーキー・ホーメルは、トム・ウェイツやべックをはじめ名だたるアーティストとのセッション経歴のある敏腕ギタリスト。彼らは共にブラジル音楽好きということで、意気投合したという。そのきっかけとなったのが、今回の作品でカヴァーされている、バーデン・パウエルとヴィニシウス・ジ・モラエスによる名曲“Os Afro Sambas”。

「ボサノヴァって、どちらかというとソフィスティケイトされていて、リッチな人に演奏されるイメージがあるんだけれど、これはバイーアとかアフリカの影響を受けた音楽だから、その当時リオで盛んだったボサノヴァの流れの中からするとかなり異端だったと思う。そのヴィニシウスのヴィジョンというのが素晴らしいと思ったんです」。

 生演奏を主体にしたバンドのアンサンブルはそうした湿度の高さを求め、NYに在住しながら活動を続けている彼女のヴォーカルも、ポルトガル語/英語/日本語を交えながら、マイペースに自分たちの好きな音楽を奏でる楽しさが素直に表れている。

「日本でも昔から街にある音として、物干し竿屋さんの歌ってあるじゃない(笑)。私からすると基本は同じで、生活に必要な〈うたごころ〉みたいな、それがボサノヴァにいちばん惹かれるところなんです」。

『人間の土地』には、NYというローカルならではの猥雑さやどこにも属さないというクールネスに、ふくよかな大地の香りが継ぎ目なく織り込まれている。

「アメリカでインタヴューを受けるときにいつも説明するのは、〈私たちの音楽はカリフォルニア・ロールなのよ〉って。オリジナルではない文化としてどんどん新しいものが出てきている料理みたいなもので、本場にはないカジュアル性が好きなんですね」。

 それはつまり、チボ・マットにあった雑多でキュートな愛らしさと同様のものだ。アメリカへの憧憬をNYに住むことで昇華したという彼女には、いま芳醇なブラジル音楽への好奇心が尽きることがないようだ。

▼チボ・マットの作品を紹介。