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第14回 ─ HYDRA HEAD

連載
U.S. LABEL GUIDE
公開
2002/07/18   00:00
更新
2002/07/22   16:40
ソース
『bounce』 233号(2002/6/25)
テキスト
文/小林 英樹

グラインド・キッズにとって激マストなボストンのレーベル

 『This Is Boston, Not L.A』といえば、80年代USハードコア・シーンを語るうえで絶対忘れてはいけないバイブル的オムニバス・アルバム。現在のシーンに多大なる影響を与えたボストンのバンドがガッチリ参加していた歴史的名盤です。そして時が経つこと20年。そのスピリットは〈進化するハードコア〉という形で真摯に受け継がれており、その中心を担っているのが今回紹介するレーベル、ハイドラ・ヘッドなのです!

 レーベル・オーナーはアーロン・ターナー。彼は轟音サイケデリック・プログレッシヴ・ハードコア・バンド(?)、アイシスのメンバーとしても有名。しかしバンドは完全にハイドラ・ヘッドに所属しているわけではなく、ワン・ショット的なもの以外はハイドラ・ヘッドからはリリースしないという頑固ぶり。自身のバンドとレーベルを完全に分けて展開しているのです。当初、彼はニューメキシコ州サンタフェでバンド活動をしたり、ファンジンを作ったりしていましたが、ボストンに移り住んだところでレーベルをスタートさせました。

 まずはヴェント、続いてロズウェルやパイボルドなどのシングルを発表し、97年に初のアルバム作品をリリースしています。それが彼自身の精神的支柱にもなっているという、ボストン・ハードコア・シーンの御大コンヴァージ『Caring And Killing』。このリリースをきっかけにしてハイドラ・ヘッドの名は広く全米に拡がっていきました。続いて注目されたのが、ブラック・サバスのカヴァー・シリーズ。7インチ・シングルのみの6作連続リリースというマニア心くすぐる形態で、アイ・ヘイト・ゴッド、A.C.、コンヴァージ、ブルータル・トゥルース、ニューロシス、トゥデイ・イズ・ザ・デイなど、そうそうたるメンツが参加。〈ハードコア←→ブラック・サバス〉のリンクで、ハイドラ・ヘッドの全貌がいよいよ見えてきたのでした。そこからはケーブル、ボッチ、ドロウイングマンと刺激的なバンドをつぎつぎに輩出していくわけなのですが、やはり超目玉となったのが最近メジャー移籍を決めたケイヴ・インの出現。セールス的成功はもちろんのこと、レーベルの実力と可能性を見せつけたと言っても過言ではありません。また、このレーベルを語るにあたって欠かせないのが他レーベルとの関係。リラプス、エスケイプ・アーティスト、セカンド・ネイチャー、そしてニューロシスのニューロットなど、他レーベルがCDリリースした作品をアナログ盤で発表するパターンや、先に挙げたような興味深い企画のコンピ盤などをリリースすることも数多し。さらに最近ではダブル・H・ノイズ・インダストリーズというサブ・レーベルも設立しており、日本が誇るメルツバウをはじめ、ディスコダンス・アクシスやスコーンなどの激コア・バンドのメンバーとDJスピードランチによるアトムスマシャー、これまたコア系のバーニング・ウィッチとゴートスネイクの別プロジェクトであるSUNNO、さらにアーロンが在籍するロータス・イータースなど、ノイズ、エクスペリメンタル、エレクトロニカ系アーティストの作品がここからはリリースされています。激コア系からエレクトロニカ系までという、恐ろしいほどの拡がり方をしているのです。確かに最近は、ハードコアからこのテのアプローチを自然に楽しんでいるリスナーが増えていますから、そんなレーベル・カラーは大正解!! まさに今ならではの面白味がハイドラ・ヘッドには詰まっているわけなのです。そしてアーロン・ターナー自身も、いちリスナーとして今のシーンを楽しんでいることは間違いないでしょう。