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インタビュー

矢野顕子

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月08日 12:23

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 天辰保文

矢野顕子は、なんたってライヴがいちばんだ!

この人がピアノを弾くと、音の一つ一つに、この人が歌うと、言葉の一つ一つに、決して譜面には描ききれない〈生のリズム〉のようなものが、あるいは〈生〉そのものが、見事な弾力をともないながら吹き込まれていく。それもあってか、矢野顕子の音楽を楽しむには、何と言ってもライヴがいちばんだ。

「スタジオの場合は、運動選手が最高記録を出すための試合のようなものではないでしょうか。そのためには予選から勝ち抜き、最高のレベルに到達したものを形にするわけですけど、ライヴというのは、毎回の試合がその時点で最高のもので、時には間違うこともあるし、生身の人間としての能力で勝負するわけですよね。それを、自分やバンドだけでなく、お客さんも一緒に楽しむという幸せな形、それがライヴです」

『荒野の呼び声─東京録音─』では、改めて彼女の魅力に触れることができるはずだ。2009年、2010年の東京と鎌倉でライヴを収録したものに、ニューヨークでのスタジオ収録の新曲《こんなところにいてはいけない》で構成されている。

「震災直後くらいにできて、ライヴではやっていたんですが、早く形にしてみなさんに聴いてもらいたかった」という《こんなところにいてはいけない》だ。

未曾有の大震災。「この震災は、多くの人々にとっては否応なしに、普通の暮らしを揺さぶられるものになった。若いミュージシャンの中には、音楽をやってる場合じゃないですよね、瓦礫を片づけに行くべきですよね、という人もいましたしね。そうやって、一人一人が人生にどう向き合うかというのを試されたわけでしょ。私は日本に住んでいないので、実際に被災されたり、日本で暮らす方々とは立場が違うけど、それでも考えさせられました」とふり返る。

「この曲は、5年ほど前に、糸井重里が書いた詞がありまして、それに手を加えつつ、創っては止め、創っては止めを繰り返していたのですが、震災後にどうしてもこれを歌いたいという衝動にかられ、そういう気持ちとこの曲が持っていたものとが合致した。それで一気に完成しました」

その《こんなところにいてはいけない》以外は、いずれもライヴ録音だが、同じライヴでも、一人での弾き語り、ウィル・リーとクリス・パーカーのトリオ編成、マーク・リーボウ、ジェニファー・コンドス、ジェイ・ベルロウズとのバンド編成での演奏といろんな形のライヴを収録した。

「ウィルとは長いですよ。『ジャパニーズ・ガール』を持って初めてニューヨークに行ったとき、そこで一緒にレコーディングして以来ですからね。彼といると、少年や少女のような頃に戻ることができる。クリスとも長い。このトリオでやるときの面白さは、純粋にリスナーとして楽しかった時代の気持ちになれることです。それも、3人一緒に瞬時になれる」

それもあってか、このトリオ編成では、キンクスやラスカルズ等の60年代のカヴァーを演奏している。

「同じ時代を共有している人たちとやったほうが上手くいく時が多い。うんと若い人たちとやると、彼らは学習してくるんですね。だから、良いんだけど、何かが違う。例えば、昔のモータウンのベースとドラムのコンビネーションは、普遍的なものとして存在しているんですが、ウィルとクリスと一緒だと現役の延長でそれができる」

また、マーク・リーボウたちとは、「世の中の誰とも違うベース、ドラム、ギターなので、一緒にやると、私の中の思ってもいなかった部分がでてくるんですよ。だから、それは私に対する楽しみでもあるし、バンドに対する楽しみでもある」

  そもそも、新しい出会いに対する労力を惜しまない人だ。認めることができる相手であれば、誰彼とを分け隔てなく、共演、客演していく。

「組む相手によって、その方とでしかできないものができる。これはもう私たちの特権のようなものだと思います」

とは言っても、相手にきちんと対応するには、幾ら天才矢野顕子と言えども、技術的、精神的な鍛錬が日頃から必要なはずだ。

「相手の方によりますけど、例えば、上原ひろみさんとご一緒したときは、生涯これほど練習したことがないほど練習しましたし、森山良子さんとやるときは、いろんな曲を聴いて、これを二人でやるとどうなるか、そのリサーチの比重が大きかったり、それぞれ準備はありますけど、上手くいったときの達成感は自分一人でやってるときとは違います。それと同じで、今回も、自分一人で頑張っても出来ない、バンドのみんなの力が合わさってこのレベルに到達する、その瞬間、3人だと喜びも3倍になるんです」

もちろん、聴き手のこちらにも喜びは様々な形でもたらされる。日本食からフレンチまで、いろんな料理を通じて矢野顕子の世界に浸ることができるかのよう な、なんとも贅沢なアルバムだ。しかも、〈生〉に寄り添う刺激もたっぷり含んでいるので、胃にもたれて、贅肉として残ることがない。そこがまた、この人の 類い希なところでもある。

『矢野顕子さとがえるコンサート 2012~清水ミチコとともに~  』
12/4(火)18:30開場 19:00開演 会場:ティアラこうとう
12/7(金)17:15開場 18:00開演 会場:NHK大阪ホール
12/9(日)17:15開場 18:00開演 会場:NHKホール(東京)
12/15(土)16:30開場 17:00開演 会場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール  (旧・名古屋市民会館 中ホール)


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