INTERVIEW(1)――解散だ、ってなった時に自分たちのことがよく見えた
解散だ、ってなった時に自分たちのことがよく見えた
――初のベスト盤ですが、こういうものを作ってみたかったんですか?
氏原ワタル(ヴォーカル/ギター)「全然(笑)。まったくバンドとしては予定していなくて。今年に入ってから、バンドとしてモードが変わったというのが、デカかったんですよね」
――それはどういう変化ですか?
ワタル「去年は一時期、(森田)ケーサク(ドラムス)が抜けたりして、それを乗り越えたというのがまずあって。あと、いままで作ってきたアルバム、特に3作目の『The World's Edge』はアレンジャーを排除して3人でやれる音でバンド感も出せた感じがしたので、その後はもう少し自由に作りたいなというのが漠然とあったんですよね。そういう意気込みで今年は臨んでたんですけど、その矢先に“バクチ・ダンサー”とか作って、次を掴んだという感触があった。この曲は評判も良くて、このタイミングでベスト盤を出すことで、“バクチ・ダンサー”から聴いてくれたファンにもそれ以前のことがわかりやすく伝わるし、バンドとしてもひとつの区切りになるかなと思って。1回リフレッシュして、次に行けるかなと思った」
――昨年、どういうことが起きたのか伺えますか。
ワタル「まあいろんなことがあって、もしかしたらそのまま崩壊したかもしれないんだけど、ま、生き返って。しかもより良くなってるという感じだから、これで良かったんだなと」
赤塚ヤスシ(ベース)「やっぱ、デカかったね。区切りでもないけど、あれがなかったとして、と考えると、あってよかったのかな」
――要するに、ケーサクさんが一度は脱退の意思表示をして、残る2人でバンドをやるか、終わりにするかぐらいな話で?
ヤスシ「そうすね。ドラマー探しましたからね」
ワタル「いいドラマーもいろいろいたんですけど、8ビート主体で、俺らの感じを出せるのはケーサクだけだったんで。まあそこで、いままでやってきたこともあるし、好みもいっしょだし、結局ケーサクのほうがいいんじゃないかと思って。で、お互いにより良くなるだろうし。そういう理由で、戻ってきた感じ」
森田ケーサク(ドラムス)「いまとなっては自分としても良かった。戻ってきて、ホントにこれしかない、って気持ちも固まったし。それで、このタイミングでベスト盤を出すのは、俺のなかでも区切りができて、良かったです」
――ケーサクさんの心が揺れた理由は何だったんですか?
ケーサク「いろいろあるんですけど、いちばんは、やってく自信がなくなった。いままでもいろいろあったんだけど、ひとつの出来事があって。でもやめた後もツアーが決まってたんで、その練習したりしてくうちに、やっぱりやろうかと。そういうことが再確認できたし、俺はやっぱりこのバンドが好きだなって。迷惑かけたけど、いま考えると、自分にとっては良かったな」
――雨降って地固まる、というところですね。それを越えることで作品の方向性にも変化が生まれてくるんじゃないですか?
ワタル「そうですね。変えたいなと思っていた時期ではある。3ピースならではの感じは残しつつ、もっとフレキシブルで、モダンというか新しい感覚というか。そのへんをブチ込みたいって感じがあって。解散だなんだになった時に、自分たちのことがよく見えたんですよね。〈じゃあ、自分たちはどういうバンドなんだ〉と。いままではカテゴライズしにくくて、〈じゃあ一体、僕は何が好きなんだ〉と考えると、パンクとかオルタナティヴとか、ちょっとヒネくれてるけど芯が通ってるというか、そういうもので。それなら、ウチらはどこまでもオルタナティヴだし。かといってメインストリームが嫌なわけではなく、そこらへんでも勝負できるというのも僕らだし。いろんな側面を持っているのが僕らなんだなあと。それがわかった時点で、やりやすくなった」
――新曲“星を集めて”は、そうした状態を反映している曲になりますか?
ワタル「“星を集めて”は、ベスト盤に入っている曲までのテンションが残ってた。去年の春ぐらいに録ったのかな。まだ次を探ってた状態で。だから新しいテンションになった時に、“星を集めて”は、どうも何か違うなあと思ってて。でも去年は出すタイミングがなかったから、ここに滑り込めてよかったかな(笑)」
――すると、これ以後の流れというのは?
ワタル「“バクチ・ダンサー”“夜明け前”。そのへんは次のアルバムに入れる予定なんで。“バクチ・ダンサー”ぐらいから僕らを聴いてくれるようになったファンがこのベスト盤を手にした時に、自分が好きな曲が入ってたら嬉しいだろうし。『SINGLES』と銘打ってる以上、シングル曲を入れるというコンセプトがあるので、〈いま〉を入れよう、と。〈10曲なう〉って感じ(笑)」
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