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インタビュー

LIVE REPORT & REVIEW――全曲解説(1)

 

太平洋不知火楽団 “Dancing hell (can't help fallin')”“たとえば僕が売れたら”

2ステージ同時開催だった当日の先陣を切った彼ら。エスニック調のワンピース(?)的な衣装を纏って大暴れするベースの大内貴博と、普通すぎるルックスからは想像できないほどの気焔を吐く笹口の狂気……というか、体内に燻っているエネルギーを無軌道にポンポン投げ付けてくるようなパフォーマンスに度肝を抜かれた。楽曲も、渦巻くようなディレイが殺伐としたサイケ感を呼び起こしたかと思えば、声を振り絞ってスケール感のあるバラードを聴かせたりと幅広いが、どの曲も隠しきれない不器用さに胸を射抜かれる。本作にはそんなオルタナ曲を2曲提供。

 

東京カランコロン “永遠の19才です”“ノッピキナラナイ存在感”

全員揃って一礼して始まった彼らのステージ。星型のトライアングルを鳴らしたり、足踏みしたり、テンポよく頷いたりと徹頭徹尾ファンシーな佇まいのシンセ女子と、その横でエモーショナルに動き回るいちろー。解釈をことごとく無効にするパフォーマンスには目が釘付けだったが、その摩訶不思議なちぐはぐさは楽曲にも宿っており、自由度の高いローファイ・ポップの中心を貫いているのは、シニカルな言葉のなかに哀愁を滲ませた歌詞とたまらない歌心。聴くたびに〈胸の奥がグッてなる〉が、どういうメカニズムでそうなるのか、自分でもよくわからない。

 

Far France “真昼にて”

驚異的な瞬発力を最後まで持続させ、相変わらずのエキセントリックなステージを繰り広げたFar France。パンク、ハードコア、プログレ、サイケなどを攪拌し、1曲のなかに数曲分の展開を詰め込むという転調上等の楽曲とガロ風の歌詞がこのバンドの特徴だが、本作にはそんな彼らの個性を端的に凝縮した“真昼にて”を提供。新ベーシスト加入後は新曲の制作に着手しているようだが、この日に披露された曲を聴く限りでは、狂ったテンションはそのままに、よりポップに開けた方向へ進みつつある模様。

 

SIAMESE CATS “落ちつかないのさ”

意図したものだろうが、ゆるい。ヴィブラートがかったように揺れるギター・サウンドも、力の抜けたコーラスワークも、とぼけたようなヴォーカルも、 ローファイを通り越してゆるゆるだ。だが、その絶妙な〈ゆるさ〉こそが、彼らが鳴らすロックンロールのキャッチーさに直結している。歌詞も草食っぽさが全開だが、そのぶん一点突破的に用意されたエモーションのチラリズムに胸を鷲掴みにされる。ライヴでは、そのエモさが格段に増幅されていた印象だ。

 

SuiseiNoboAz “Happy1982”

取材の際の石原は、黙ってそこにいるだけなのに妙な迫力があった。その印象はそのままステージ上にも持ち越され、途中入場した筆者がいきなり目撃したのは、ギターを頭に打ち付ける彼の姿。その突き抜けたパフォーマンスは都会の荒涼としたムードを充填した武骨なロック・サウンドと相乗効果を成し、フロアにモッシュの嵐を巻き起こしていた。本作に提供された“Happy1982”は、リフ主体のシンプルな楽曲に微量のサイケ感を溶け込ませた、酔いどれ気味のラヴソング。ニヒルな歌詞がなんとも彼ららしい逸曲である。

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年07月07日 17:59

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