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インタビュー

HIFANA(2)

チャンネルをガチャガチャ変えるような

 デビュー・アルバム『FRESH PUSH BREAKIN'』で披露されたHIFANAの音源は、ヒップホップやその他のブレイクビーツ・ミュージックと同じ括りに入りうるけれど、テイストは多くのダークでシリアスなダンス・トラックとはかなり異なるオリジナルなものでした。例えばトラック中では、スクラッチやサンプリングのネタに日本語のものが大量に投入され、三線や祭囃子までが組み込まれていて、祭り好きの血を刺激する独特の質感に。そして、このたびリリースされた待望のセカンド・アルバム『CHANNEL H』では、前作の勢いをさらに押し進めた、熱~い全15曲の〈リズム遊び〉が散りばめられています。

〈TV〉をテーマに、〈言いたいヤツには言わせておけ〉という強気な声サンプルで幕を開け、ゲストも多数歓待。KURTIS FLY、Keyco、犬式の三宅洋平、ASA-CHANG&巡礼でお馴染みのタブラ奏者=U-zhaanとシタール奏者のKEISUKE、TUCKER、そしてTWIGYなど。人選はHIFANAのスタイルと同様にジャンル不問ですが、特にTWIGYのフロウがHIFANAのビートにもたれかかるレイドバック・ナンバー“AKERO”はHIFANAの新たな魅力を引き出していると言えそう。

「(前作でフィーチャーしたGAGLEのHUNGERに続いて)セカンド・アルバムにもラップは入れたいから絶対誰かにお願いしようということになって。HUNGERに、〈ラップしてもらうとしたら誰がいいか?〉というのを訊いたらTWIGYの名前が出てきた。最高ですね」(KE-IZO)。

 そのほか、活動初期からライヴで好評を博してきたという三味線ネタと909のキックが疾走するパーティー・チューン“WAMONO”、居酒屋のざわめきと瓶ビールのボトルを吹く音に続いて犬式の三宅洋平とKURTIS FLYががなるビール賛歌“MR. BEER”、Keycoがグルーヴィーに歌うレゲエ調の異色歌モノ“NAMPOOH”など実に多彩。また、「耳に引っかかるポッピーなビートをひたすら集める」(KEIZO)、
「お弁当を持って、ゆっくり録りたいです(笑)。外の音なんかも録ったり!」(JUICY)と2人が語るサンプル・ネタには、バリのガムランなどのサウンドも採り込まれており、(当人たちは意図したわけではないのでしょうが)その土着感がなんともアジア的。前作にはなかったブリーピーなベース・サウンドがフィーチャーされているのも聴きドコロです。

 さらに、DVDでは正真正銘のTV版〈CHANNEL H〉ともいえる全13曲のプロモ・クリップも収録。

「前回のアルバムをCDとDVDのセットでリリースしてみて、〈映像が全部の曲に付いていたらおもしろいのに〉という意見があって。ただ、全部の曲に付けるのは難しいから、映像がたくさんあって、チャンネルをガチャガチャ変えるようなノリで観れるようなアルバムにしよう、と」(KEIZO)。

 ライヴのVJを手掛けるVJ GECや、+CRUZ、ELECROTNIKといった映像クリエイター陣が手掛けたプロモ・クリップからは、随所にHIFANAのリズムに合わせたギミックが散りばめられています。うーん、フレッシュ! 

 最後に新作を完成させたばかりの彼らに、どんなものに〈フレッシュ!〉を感じるのか尋ねてみました。すると意外な回答が……。

「それがいままで誰もやっていないことではなくても、元気で自由なものにはフレッシュさを感じます。知っている魚であっても、獲れたてのものはフレッシュだから」(KEIZO)。

 ゲップの音から鳩の鳴き声まで(!)、あらゆる音がビートとして仕込まれた『CHANNEL H』。ラストは前作と同様、彼らのトレードマークともいえる民族楽器、アサラトのみの演奏が聴ける“ASALATO”で幕を閉じます。これこそ彼らのリズム遊びが、そのアイデアのみならず技術面でも常に進化している!という揺るぎない美学の表れかも。HIFANAの快進撃は間違いなくまだまだ続いていくでしょう。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月01日 16:00

更新: 2005年09月15日 19:02

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/原田 亮