1908年7月9日、東京牛込で生を得た朝比奈隆。この巨人の偉業を称えるべく<100歳の誕生日>に開催された記念コンサートのライヴ録音の登場です。
演奏は朝比奈が創設し、半世紀以上に渡りその薫陶を受けた大阪フィル。指揮は、後任として新たな黄金期を大阪フィルと迎える現音楽監督の大植英次。そして1986年の欧州公演以来、朝比奈=大フィルと数多くの名演を残す伊藤恵のピアノ独奏。まさにセレブレイティブな顔ぶれです。
朝比奈といえば、何と言っても真っ先に思い浮かべるのはベートーヴェン・ブラームス・ブルックナーの演奏であり、モーツァルトはややそのイメージから離れた存在です。たしかに交響曲は限られた作品のみを演奏していました。しかし、ピアノ協奏曲は数多くのピアニストと共演しており、1955年にはモーツァル生誕200年を記念してその全曲演奏会をおこなっています。
コンサートは<隠れ朝比奈レパートリー>で開幕。朝比奈と伊藤のモーツァルト共演は、ハ短調K.491だけでしたが、今回は大植の提案でK.488を演奏しています。シューマン全集CDを完成し、円熟への過程を歩む伊藤のピアノは色彩感に溢れ、幸福なモーツァルトを奏でています。
そして後半は、いよいよ朝比奈芸術の神髄 ブルックナーに大植が挑みます。
ところで、朝比奈は93年の生涯で約200回ブルックナーを演奏しました。1954年における初めての演奏、そして亡くなる3ヶ月前の最後の大阪公演、ともに「第9番」を指揮しています。
大植はこれまで大阪フィルと2004年に第8番、2006年に第7番とブルックナー演奏を重ねています。彼は朝比奈の書き込みが残るパート譜を使用し、重厚な<朝比奈サウンド>を継承しつつ、さらにアンサンブルを磨いてきました。今回の演奏会で、大植は譜面台に朝比奈の肖像写真をおき<ブルックナーを知り尽くしている>オーケストラとともに「特別な交響曲」へ歩を進めます。D音の集積で開始される森厳の世界から諦念の回想の如く終結する1時間──そして長い沈黙を経ての圧倒的な賞賛の拍手に、大植/大フィル5年間の輝かしい道程を感じずにはいられません。
朝比奈生誕100年を祝すとともに、大植=大阪フィルの洋々たる未来を提示する記念盤です。
[コメント提供;フォンテック]
発売・販売元 提供資料
2008年7月9日、ザ・シンフォニーホール(大阪)で「朝比奈隆生誕100年記念」として行われた演奏会のライヴ録音。ブルックナーは近年アンサンブルの緻密さが増した大阪フィルが壮大かつ見通しのいいサウンドを展開、大植のしなやかなリードと相まって伝統から一歩踏み出した清々しいブルックナーを味わえます。併録のモーツァルトも伊藤恵の上品なソロと引き締まったバックがよく調和しており聴き応えあります。SACDハイブリッド盤で生々しい音質。
intoxicate (C)中川直
タワーレコード(vol.78(2009年02月20日発行号)掲載)