メンバーズレビュー一覧

モーツァルト: 交響曲集 (第25・29・33・35《ハフナー》・36《リンツ》・39・40番), セレナード第13番《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》, 行進曲 K.408<タワーレコード限定> / イシュトヴァン・ケルテス、他

私がケルテスという指揮者の名前を知ったのは、多くの方と同様、あの《新世界》のレコードにおいてである。その後、新宿の中古レコード店で《未完成》のLPを見つけて購入した。中学3年生の秋だった。

すでにケルテスは不慮の事故で亡くなっていて、追悼盤としてブラームスの交響曲全集がリリースされた。セット物を買うことなど出来ず、FM放送を録音して聴いた。

 1970年代にクラシック音楽に目覚めた私にとってのアイドルはカラヤンだった。世界最高の楽団=ベルリン・フィルと毎月のように繰り出す新譜は、何をおいても聴かなくてはならない対象であって、実際それだけの価値のある凄演が刻印されていた。椎間板の手術を受ける75年までの全盛期の作品には一つとして駄作はない。本当にいい時代だった。

 そんな私にとって、もう一方の雄=ウィーン・フィルの魅力を最大限に引き出すことができる指揮者は(ベームではなく)ケルテスだった。ベームの全盛期は60年代で終わり、その時代に収録したモーツァルトもシューベルトも、オーケストラはウィーンではなく、ベルリンだった。全盛期を過ぎた老匠が奏でる音楽は、立派ではあっても、ワクワクと心踊るものとは会えなかった。

 ケルテスは、ウィーン・フィルとともにシューベルトを、ブラームスを、そしてモーツァルトをレコード化した。これらは、ケルテスにとっても、ウィーン・フィルにとっても、最良の演奏を展開した名盤といえる。

 いずれ劣らぬ名演が展開されているが、改めて聴き直して、モーツァルトの素晴らしさは群を抜いていることに気付く。ワルター、ギーゼキング、ハスキル以後、モーツァルトを奏して、その天才を示し得る名演を成し得るのはケルテスとスウィトナーではないか?

 モーツァルトの交響曲の名盤を挙げよと問われたならば、私なら、ケルテス/ウィーン・フィルとスウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデンにトドメを指す。

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ジャスミンさんが書いたメンバーズレビュー

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その後、夥しい数のレコードがリリースされたが、未だにこれを凌駕するものは現れない。ブーレーズと並ぶ《ハルサイ》の二代名盤である。

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素晴らしいモーツァルトだ。ワルター、ギーゼキング、ハスキル亡き後、その天才を描き得る数少ない音楽家と言ってよいのではないか?

 いわゆる世評の高い指揮者にカール・ベーム先生がいらっしゃるが、ベームの全盛期は60年代まで。その時期に収録した全集は、ウィーンではなくベルリンを振ってのものだった。面白いことに、シューベルトもブラームスもそうだった。70年代にウィーン・フィルと再録音したものは、立派ではあっても、心踊る音楽とは言えない。

 その点、スウィトナーは、瑞々しく、活力に溢れ、ワクワクするような音楽を奏でる。

 私にとって、理想のモーツァルト演奏は、スウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデンと、ケルテス/ウィーン・フィルということになる。幸いなことに、いずれも、タワーレコードの復刻盤として入手できる。とりわけSACD仕様のスウィトナー盤は必聴だ。

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私がケルテスという指揮者の名前を知ったのは、多くの方と同様、あの《新世界》のレコードにおいてである。その後、新宿の中古レコード店で《未完成》のLPを見つけて購入した。中学3年生の秋だった。

すでにケルテスは不慮の事故で亡くなっていて、追悼盤としてブラームスの交響曲全集がリリースされた。セット物を買うことなど出来ず、FM放送を録音して聴いた。

 1970年代にクラシック音楽に目覚めた私にとってのアイドルはカラヤンだった。世界最高の楽団=ベルリン・フィルと毎月のように繰り出す新譜は、何をおいても聴かなくてはならない対象であって、実際それだけの価値のある凄演が刻印されていた。椎間板の手術を受ける75年までの全盛期の作品には一つとして駄作はない。本当にいい時代だった。

 そんな私にとって、もう一方の雄=ウィーン・フィルの魅力を最大限に引き出すことができる指揮者は(ベームではなく)ケルテスだった。ベームの全盛期は60年代で終わり、その時代に収録したモーツァルトもシューベルトも、オーケストラはウィーンではなく、ベルリンだった。全盛期を過ぎた老匠が奏でる音楽は、立派ではあっても、ワクワクと心踊るものとは会えなかった。

 ケルテスは、ウィーン・フィルとともにシューベルトを、ブラームスを、そしてモーツァルトをレコード化した。これらは、ケルテスにとっても、ウィーン・フィルにとっても、最良の演奏を展開した名盤といえる。

 いずれ劣らぬ名演が展開されているが、改めて聴き直して、モーツァルトの素晴らしさは群を抜いていることに気付く。ワルター、ギーゼキング、ハスキル以後、モーツァルトを奏して、その天才を示し得る名演を成し得るのはケルテスとスウィトナーではないか?

 モーツァルトの交響曲の名盤を挙げよと問われたならば、私なら、ケルテス/ウィーン・フィルとスウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデンにトドメを指す。

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発売当初より同全集の決定盤として評価されてきた名盤である。しかしながら、国内盤レコードの音質が芳しくなく、バックハウス盤やケンブ盤に後塵を背してきた。アメリカやロシアのブレスも粗雑な仕上がりで歯痒い気持ちだったのを思い出す。ギレリスのベートーヴェンならば、むしろモノラル盤を採るべきかと半ば諦めていたところに、SACDリマスター盤がリリースされた。またまた期待ハズレになるのでは?とたかを括っていたが、これが素晴らしい!やっと当盤の真価が問われる状況が整った。

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リヒテルが絶頂期にもっともコンディションの良い状態で弾いたらこれほど凄い演奏になるんだ、という、恐るべき記録である。のちにセッション録音した、完成度の高い演奏もあるが、それとは別次元の圧倒的な爆演に、身の毛もよだつ思いだ。ギレリスが『私など、リヒテルと比べたら何でもない。』と語ったのが思い起こされる壮絶な演奏だ。

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