メンバーズレビュー一覧

ミッシャ・エルマンさんが書いたメンバーズレビュー

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(全4件)

幸松 肇 著作集全7冊<限定販売>

幸松肇

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

幸松肇氏が世界中の弦楽四重奏団のSP/LP/CDを何十年もかけて収集して、各弦楽四重奏団の演奏の特徴、活動の歴史、団員の変遷、代表的録音、を詳述したもの。幸松氏の弦楽四重奏団と四重奏曲が好きで好きでたまらない気持ちがあふれる文章は読んでいて胸が熱くなる。ヴァイオリニスト好きの私には四重奏団の第1ヴァイオリニストの経歴がヴァイオリニストの技量と共に書かれているのが大変うれしかった。幸松氏は1975年から1982年まで「LP手帳」に「レコードによる弦楽四重奏曲の歴史」を連載していて、これをまとめたのが2006年に「古典叢書」より一部復刊されていたがいつのまにか入手困難になった。2016年にDU BOOKSより完全復刊されたがこれも現在は入手困難になっている。この本と「世界の弦楽四重奏団とそのレコード」は弦楽四重奏団好きの間では珠玉の2大名著となっています。弦楽四重奏の沼にはまりたい方は是非ご一読を。

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リリコ・カンタービレ

髙木凜々子、他

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

高校生の頃からクラシックのヴァイオリン小品集のSP、LP、CDを50年以上集めています。戦前の名ヴァイオリニスト、クライスラー、ティボー、エルマン、などが弾く味のある演奏はその時代から100年も経た現在では絶滅したと思っていました。本CDの録音時芳紀25歳の髙木凛々子のヴァイオリンの音色は独特のくぐもった官能的な甘さがあり、ユーモレスク(ドヴォルザーク)は最晩年のエルマンのヴァンガード録音の名演を思い出しました。黒沢楽器店より貸与されたストラディヴァリウス固有の音色と髙木凛々子の個性が非常にマッチしたのではないでしょうか。どの曲の演奏もどこか戦前風に歌い上げていて素晴らしい。
なかでも詩曲(ショーソン)は陰にこもった音色が深刻な曲の内容を現わしていて、外来の演奏家と比べても図抜けている。ティボー、エネスコ、以来久々の素敵な詩曲の演奏を聴けて嬉しい。髙木凛々子はヴァイオリニストのバイブルと云われているバッハの無伴奏ソナタ&パルティータも本ストラッドを弾いて録音している(RAVO-10014/15)。ヴァイオリンの音色は美しいが若さゆえの力不足が散見するのは致し方ないと思った。バッハの同曲では諏訪根自子が58~60歳でシゲッティもかくやとばかりの名演奏盤(キング)を世に出した。髙木凛々子も頑張って欲しい。

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ピアニストのマリア・プリンツは、ウィーンpoの首席クラリネット奏者アルフレート・プリンツ(1930-2014)の奥様。FONTECにブラームスのクラリネット・ソナタ集を夫妻共演で録音している(FOCD3226)。これはとてもアンティームでコクのある素敵な演奏でした。マリア・プリンツは1956年ブルガリアのソフィア生まれ。ウィーンでイェルク・デムス、パリでイヴォンヌ・ルフェビールに師事したらしい。本盤の演奏はウィーン菓子のように上品で甘いとってもチャーミングな演奏。プリンツ夫人の演奏を聴いていると伝統とか文化、嗜みなどなどの言葉が浮かんでくる。現れる形は違うが、遠山慶子の一連の香るようなモーツァルト(Camerata録音)もプリンツ夫人を聴いていると思い出されてくる。
このブルガリアCDのリブレットにはアルフレート・プリンツへの言及は無い
が、売り場で手書きポップで上手く宣伝すれば手に取る人がもっと多くなるの
ではないかと思う。マリア・プリンツの録音はGEGA NEWでは伴奏で何枚かあるが本格的Pf独奏は本盤しか見当たらない。LP時代のバルカントーンに録音があるかは残念ながら調べがつかなかった。本盤は大推薦盤。

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ベートーヴェンのVn,Vc,Pfの為の三重協奏曲はウェリントンの勝利(戦争交響曲)と同系統の手抜きの散漫な曲と思っていた。19世紀の作曲家ライネッケがオケの水膨れした部分を思いっきり絞り切って芸術部分のみを凝縮させて作り直したのが本盤。三重奏で3人のソリストがこれほど真剣に曲の核心を抉り取ろうとクレメル筆頭に鬼の形相の演奏は他盤では味わえない。併録のショパンも、もはや柔和なショパンを超えて最晩年のブラームスに行き着いている滅多に聴けない怪演。両方とも大推薦。

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