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第21回 ─ 活躍に悔しさを覚えたクルー ~NITRO MICROPHONE UNDERGROUND 『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』

第21回 ─ 活躍に悔しさを覚えたクルー ~NITRO MICROPHONE UNDERGROUND 『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』(2)

連載
サ イ プ レ ス 上 野 の LEGEND オブ 日 本 語 ラップ 伝 説
公開
2009/10/09   18:00
更新
2009/10/14   18:28
テキスト
文/東京ブロンクス

TARO「そのQUATTROのライヴは、COMA-CHIが非常階段から上っていって、タダで観たんですよ」

ブロンクス「さすがストリート・ガールだな~。ミチバタ女(笑)」

上野「妖怪みたいじゃないすか(笑)」

ブロンクス「むしろシンデレラでしょ。あとあれだよね、ニトロはお洒落だったよね」

TARO「俺、ニトロのファーストが出た2000年あたりってラップしはじめた時だったんです。だから、モロにかぶれてましたね。いっしょにイヴェントやってた仲間と〈ヒェーヒェー〉って言いまくって(笑)。あとMUNEO45さんっているじゃないですか。降神の志人が小学生くらいの時よく遊んでもらっていた知り合いの兄ちゃんが、MUNEO45だったことが発覚したんです。志人は、MUNEO45さんの家のポストにデモテープをよく入れていたらしいです」

ブロンクス「トラックメイカーだよね。他には誰がいたっけ? DJ WATARAI、DJ VIBLAM……」

TARO「HAZIMEさんと、ITA-CHOさん」

ブロンクス「ITA-CHOさんはすごい気難しい人だって聞いてたんだけど、この前初めてセッションさせてもらったら超おもしろい人だったよ。前から古い映画のポスターのコレクションがヤバいらしいって噂を聞いててさ」

TARO「あの人、 ブログやってますよね。前に見た時は、レコードの買い付けをしまくってた時の話を書いてて。超ハードコアな。倉庫を閉められて、明日の朝迎えにくるから、それまで掘ってろって言われた話とか」

ブロンクス「あの人たちの堀りっぷりはすごいよ。当時はKING OF DIGGIN'*5の人たちが、100万単位でレコードを買ってるって話が噂話じゃないレヴェルで、次々に入ってきたでしょ」
*5 MUROによるアパレル・ブランド/レーベル。

TARO「そうですね。宇田川町を支えてたっていうか。街の経済効果はかなりデカかったはずですよ」

ブロンクス「あの人たちがレコードに値段を付けなかったら、あんなに街のバリューは上がらなかったよね」

TARO「いいモノをいいモノとして価値をちゃんと付けてくれましたからね」

ブロンクス「だってMUROさんの店で売ってるレコードは高かったもん(笑)」

上野「(爆笑)高かったすよね。STILL DIGGIN'*6もSAVAGEも全部高えっていう。服もレコードも見るだけ見て、睨まれて帰ってくる(笑)。何しに行ってんだって」
*6 MUROによるセレクト・ショップ。

TARO「俺も高くて買えなかった。空気を吸いに行く、みたいな」

ブロンクス「いま思うと、高校生の俺らには買えなかったけど、30歳を超えてもずっとやっていけるヒップホップみたいなのを、K.O.D.P*7はその頃から提示してたよ」
*7 MUROが率いているクルー。

上野「ニトロはそこも継承してるからまたうらやましいんですよね(笑)」

TARO「俺なんか、始めたばっかで悔しいって感じはそこまでなかったですけどね」

上野「TAROは、早いうちからDABOさんといっしょにやってたでしょ?」

TARO「そうですね。DABOさんがセカンド・アルバムの『HITMAN』を出す前あたりくらいから。Y'sと俺とkalliostroとBLACK BELTが前座で出たりしてて」

ブロンクス「ニトロとDEJIに接点があったんだ!? さすがアンダーグラウンド・コネクション、志人からDEJIまで……って狭いけど(笑)。Def Jamってニトロが第1弾で、第2弾がDABO君だっけ?」

TARO「DABOさんのほうが先じゃないですかね。“拍手喝采”のアナログが、〈Def Jam Japan 001〉ですね、品番が。アルバムはニトロが先だったかもしれないけど、シングルの品番001で、このエンジのロゴにとうとう日本人が、みたいな」

ブロンクス「Def Jam Japanは凄いことだったよね。あと、そのタイミングでレッドマンが来日したでしょ?」

TARO「レッドマンとDABOさんでやったんですよ。SHIBUYA-AXかどこかで2マン」

ブロンクス「DABOくんが出てきた頃って、なんかラージな感じだったけど聴かずにはいられないカリスマ性があったよね。それがリリックの鋭さに出てた」

TARO「リリックが凄かったっすよね。“Mr.Fudatzkee”とか比喩がエグい。ニトロの場合は、リリックが超アブストラクトだったじゃないですか。テーマが見えなくて、いままでにない感じ。ビートに合うバースをキックしたみたいな」

ブロンクス「ニトロが集まった時のマジックはあるよね。俺は本隊以外のMABO『デラコスタ』とか『DELI presents チカチカ(秘)大作戦』みたいな、ユーモア・センスがあるのが好きだった。MABOのDJでデザイナーのチンスクスク a.k.a タクミくんって超ウケる人がいるんだけど、町屋スタジオって、DABOくんとかが高校ぐらいの時からずっとたまってるヤサの主でさ」

TARO「前に〈BLACK FILE〉*8の〈オタクIN THA HOOD〉で行ってましたよね。あそこに住んでる人ですか」
*8 スペースシャワーTVで放送中のTV番組。

ブロンクス「そうそう。デザインもヤバいんだけど、なんかビリケンさんみたいな人。タクミ君とMACKA-CHINくんが、サブカルの空気を入れてるんだと思う」

上野「MACKA-CHINさんのソロ作とか、どこ行くかわらない感じですもんね」

ブロンクス「『CHIN ATTACK』に入ってたインストとか超かっこよくなかった?」

上野「かっこいいっすね。関係ないんですけどDABOさんの“PINKY~だから、その手を離して~”は? 高校の時の友達から電話かかってきて、スペースシャワーTVかなんかで見たっぽいんですけど〈あのDABOってやつの“ピンキー”って超良くねぇ?〉って言われたことがありますね。俺もこの曲にはやられたな~」