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第187回 ─ 壮大なゴング宇宙を飛び交う音楽の彗星を探しに、いざ出発だ!

連載
360°
公開
2009/09/16   18:00
ソース
『bounce』 314号(2009/9/25)
テキスト
文/北爪 啓之

  〈フジロック〉のラインナップにゴングの名前を見つけた人々のうち、〈知らんな~〉と首を傾げたナウなロック・リスナーが半数。仰天してひっくり返った連中が半数。さらに、仰天したうちの半分が生粋のプログレ好きで、もう半分がアシッド漬けのトランス・エイジ……というのはあくまで想像だが、極論を言えばゴングとはそんなバンドである(え、全然わかんないって?)。

欧州放浪中にウィリアム・バロウズの知遇を得たオーストラリア出身のデヴィッド・アレンは、66年にUKでケヴィン・エアーズやロバート・ワイアットらとソフト・マシーンを結成するも脱退。その後、69年にパリでジリ・スマイス(後の伴侶)と始めたバンドがゴングである。

彼らの名を一躍広めたのは73年から立て続けに発表された『Angel's Egg』『Flying Teapot』『You』──いわゆる〈Radio Gnome3部作〉だ。スティーヴ・ヒレッジやティム・ブレイク、ピエール・ムーランら腕利きの奏者たちが繰り出す、コズミックかつサイケな超絶ジャズ・ロックに乗せて紡がれるのは、アレンが構想した〈見えない電波の妖精の物語〉なる、ゴング惑星から飛来した宇宙船が舞台のブッ飛びまくりなSFファンタジー。肉体的なグルーヴに溢れたサウンドと、ドラッギーな理想郷を描くアレン独特のヒッピー/ビートニク精神の融合こそが、技巧主義に陥りがちな他のプログレ・バンドとの最大の違いであり、ゴングが90年代以降のレイヴ世代にアシッドなコズミック・バンドとして〈再発見〉された由縁ではないだろうか。

しかし3部作発表後、アレンを含む主要メンバーが次々と離脱。プラネット・ゴングやニュー・ヨーク・ゴングとして活動を始めたアレンや、ゴングの本流支流に関わった連中がさらに別のゴングを名乗ったことで、その枝葉は世界中に拡散されていった。


  なお、今回〈フジロック〉で来日したのは、アレンを中心に再結成された本家ゴングである。システム7として活躍するヒレッジが35年ぶりにライヴに参加したことでも話題だったが、さらに驚いたのは同じメンバーでニュー・アルバム『2032』を制作したということだ。かつての3部作を継承したゴング惑星の物語が、ヒレッジのトランシーなギターやジリ・スマイスのスペース・ウィスパリング歌唱で描かれていく様は、まさにバンドの全盛期を彷彿とさせ、嬉しさに思わず頬が緩む。また、71歳にして衰えを知らないアレンの諧謔精神は、へっぽこラップなどに結実している(この調子なら150歳までは生きるだろう)。加えて、ROVOの勝井祐二が参加した“Portal”も圧巻。シンセがフリーキーに飛び交うなか、勝井のヴァイオリンが唸りを上げて疾走していく完全無欠のスペース・ロックとなっている。

 正直、ここまで現役感漲る音楽を披露してくれるとは思ってもいなかった。なんて素敵で頼もしい不良老人たちなのだ! そんな彼らの結成40周年を祝して(!?)、このページではゴングに通じる宇宙ミュージックの数々を紹介していこう。

▼ゴングのアルバムを一部紹介。

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