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第6回 ─ 〈サマソニ〉復習編 Part.2 各アクトの詳細をレポート!

第6回 ─ 〈サマソニ〉復習編 Part.2 各アクトの詳細をレポート!(2)

連載
オレらの夏フェス 予習・復習帳 '09
公開
2009/08/19   18:00
更新
2009/08/20   19:58
テキスト
文/澤田大輔、ダイサク・ジョビン、土田真弓、ヤング係長

8月8日(土)

16:10~
■THE HORRORS @ SONIC STAGE

  どこまでも妖しく不穏な雄叫びを上げるギター・ノイズと音源より煌めき度を増したシンセがゆっくりと攪拌されるようなグルーヴに取り巻かれた瞬間、昨年、同じシチュエーションで目撃したジーザス&メリー・チェインや〈フジロック〉のマイ・ブラディ・ヴァレンタインで得た陶酔感が蘇った。“Mirror's Image”で幕を開けたステージは、セカンド・アルバム『Primary Colors』の楽曲のみで構成されたセットリストで、重くのしかかるようなサイケデリック・ワールドをとことん演出。うねりまくる轟音とオカルティックな空気をその身に纏いながら顔色ひとつ変えずに演奏する5人のプレイ・スタイルもサウンドにぴったりで、たまにハンズクラップを煽ったり、拳を突き上げたり、猫背気味にステージ上を徘徊したりするヴォーカルのファリス・バドワンも、仕草がいちいち気だるげだ(でも、時折シャウトしてみせたり、フロアに降りてオーディエンスの写真を撮ってみたりと、見た目とは裏腹にしっかりとプレイを楽しんでいる様子)。ラストは“Sea Within A Sea”。各パートが掻き鳴らす仄暗いメロディーが揺らぎながら美しいグラデーションを描き、最後には耳をつんざくノイズへと変化してステージはフィナーレを迎えた。われに返ったように一拍おいて巻き起こった拍手が、〈SONIC STAGE〉に別世界が現出していたことを証明していたように思う。*土田

16:40~
■METRONOMY @ DANCE STAGE

  アルバム『Nights Out』を聴いて、最高なんだけどなんだか腑に落ちないと思っていたのは、変声ヴォーカルや奇妙なシンセ音など、彼らがどこまで本気なのかよくわからないところ。なんだか友達と暇つぶしでやっているユニットのようでもあるし、レジデンツみたいなアート色の強いコンセプト・ユニットのようでもある。学生が作ったような手作りPVを見ても、どこまでが本気かまったく理解できなかったので、生で観るのを楽しみにしていた。期待に胸を膨らませて挑んだのだが、観てみた印象は、こちらの期待を裏切るようにファニーでヘッポコ。サポートで入ったという女性ドラマーと黒人ベーシストの音を軸に、例のストレンジなシンセ音&歪んだヴォーカルがうねうねと乗っかる。全員丸いライトを身に付け、それが音に連動して〈パッ、パッ〉と点いたり消えたりする仕掛けや、ゆる~い振り付け、演奏力など、どれを取ってもインディー感満載だった。完成度の面ではとても褒められたステージではなかったが、観ているとアットホームなノリがなんだか楽しくて仕方がない。それはみんな感じていたようで、苦笑しながらも踊っているお客さんをたくさん見かけた。ほぼ生演奏だったが、唯一の打ち込み曲“The End Of You Too”がいちばん盛り上がっていたように思う。そのズレた感じもメトロノミーっぽいということなんだろう。*ヤング

17:00~
■JOAN JETT AND THE BLACKHEARTS @ MOUNTAIN STAGE


(c)SUMMER SONIC 09 All Rights Reserved

  70年代後半に活躍した元祖ティーンエイジ・ガールズ・バンド=ランナウェイズの元ギタリストであり、“I Love Rock N Roll”が大ヒットした〈女性ロックンローラーの元祖〉というイメージしかなかったんだけど、なるべく観る機会のないレアなものを観ておこうってことでライヴ観戦。まず、〈なんっつうオールドスタイルなロックンロールなんだろう……〉とビックリ。すっかり忘れていたけど私がまだ小さい頃、80年代前半ってこういうのがロックのメインストリームな形だった気がする、つまりオルタナ・ムーヴメントが勃興する前のアメリカン・ロック。表裏のない非常にわかりやすい3コードの荒々しいハード・ロックとパンク・ロックの間ぐらいのティーン向け青春ロック(?)的な絶滅種的サウンドが逆にイジョーに新鮮で、聴いてるうちに熱くなってくるものがありつつ、50歳を越えたジョーン姐さん(?)は変わらずお美しいお顔で、でもそんなお顔は怒りで鬼の形相となってしゃがれた野太い声でシャウトしていて、おまけに贅肉ゼロの鍛え抜かれた筋肉質な身体にまた圧倒されつつ、なんていうんだろう? いろいろな意味でカルチャーショックを受けっぱなしでした。ただ、頑なに己のロックンロール道を貫き通している姿がとにかくカッコよく、それを受け入れる土壌のあるアメリカという国、NYという街の懐の深さにもまた感心させられたといった具合です。*ジョビン

18:00~
■TOM TOM CLUB @ DANCE STAGE

  伝説のニューウェイヴ・バンドが、DJやジャマイカンMC、コーラス(ティナの妹!)を含む大所帯バンドを従え、ついに〈サマソニ〉に降臨!!……と、煽り気味に書き連ねてみたものの(実際、それくらいの興奮を胸に〈DANCE STAGE〉に駆け込んだのだけど)、温和な雰囲気とパーティー・フレイヴァーに満ちたトム・トム・クラブに、大仰な飾り文句は似合わないのかもしれない。ライヴ開始早々に、幾度となくサンプリングされた正真正銘のクラシック“Genius Of Love”を披露した彼らは、その後も持ち前のファニーですっとぼけたグルーヴを放出し続け、集結したオーディエンスを愉快に踊らせ続ける。そのアンサンブルは往時となにひとつ変わってなかったが、だからこそ新鮮に響いたのだろう。彼らに象徴されるような、80年代のコンパス・ポイント・スタジオで生み落とされたサウンドはエヴァーグリーンな魅力を備えているとつくづく感じた次第。ベースを操るティナ嬢のアクションが、ヴィデオなどで観たトーキング・ヘッズ時代のそれとまったく変わってないことにも大いに感銘を受けた。終盤の〈おしゃべり魔女〉こと“Wordy Rappinghood”でさらなる熱狂を呼び込んだ彼らは、なんとラストにトーキング・ヘッズのレパートリーでもあったアル・グリーン“Take Me To The River”をプレイ! かつてのニューウェイヴ少年は全員号泣したに違いない、ファン・サーヴィスもたっぷりのステージングだった。*澤田

18:30~
■ELVIS COSTELLO AND THE IMPOSTERS @ MOUNTAIN STAGE


(c)SUMMER SONIC 09 All Rights Reserved

  ジャズでもクラシックでもカントリーでもなく〈ロック〉なモードらしい、というウワサを聞いていたんで非常に楽しみだったコステロさん。実際、登場するやいなやいきなりハイテンションに〈イェ~イ!!〉とか言って煽ったりして、やる気マンマンなご様子。一時期よりもちょっとは痩せてたんでちょっと一安心しつつ、偉ぶった口髭に大きめなグラサン、水玉のシャツに水玉のネクタイに黒のスーツっていう姿が、マイアミあたりのおっちょこちょいで冴えないマフィアのボスみたいでダサかっこよくてそれもコステロらしくて良し!!とコーフンしてくる。さて、内容のほうはというと、初期~中期のキャッチーで威勢のいいナンバーばかりをかましてくれて〈コステロ・ロックンロール・ショウ〉といったサイコーのステージでした。ギターを弾きまくり、声も良く出てて、あの名曲、美メロの数々が目の前で演奏されていると思うと、青春時代にコステロを聴き狂った私としてはもう感動なわけです。演奏もタイトで鉄壁だし、これ見よがしに取っ替え引っ替えする超高価そうなヴィンテージ・ギターの鳴りのひとつひとつも格別の味わいで。そんで、ラストは不朽の名バラード“Alison”。生で熱唱するのを聴いて、そのあまりの曲の美しさに思わず涙。やっぱりポピュラー音楽史上に残る名曲だよね、と改めて噛み締めながら聴き惚れていました。*ジョビン

19:00~
■CSS @ SONIC STAGE


(c)SUMMER SONIC 09 All Rights Reserved

  ヴォーカルのラヴフォックスが登場すると、周りにいた女子が〈ギャ~~!! ラヴフォッグズ~~!!〉と半泣き状態で叫びなら前へ特攻する。女性からの支持の高さを目の当たりにしてビビりながらステージに目を移すと、当のラヴフォックスはスパンコールの全身タイツというオモシロ衣装(20cmはある帽子までスパンコール)。水揚げされたばかりの鯖か鰯かってくらいギラギラ光りまくりながら、ステージから客席まで、エネルギッシュに動き回る。その縦横無尽な動きに応じるように、バンドもタイトな演奏で魅せるステージを作っていた。以前と比べて確実にビルド・アップされた音で聴く“Music Is My Hot Hot Sex”は、のんびり観ていた後方のお客さんまで踊らせるほどの威力。その娯楽性の高さに「スタジアムでやっても絶対盛り上がるよな~」と思わされてしまった。「オニギリタベスギタ」「オットットット」など、誰に教わったのかMCで謎の日本語を連発している様子からは、彼らが本当に日本好きであることが伝わってくる。とにかく楽しくて、笑えて、踊れる。ラストの“Alala”まで、〈SONIC STAGE〉にいる人みんながニコニコのいいステージでした。しばらく活動をお休みするらしいけど、その前に観ることができてよかった! *ヤング

20:15~
■THE SPECIALS @ MOUNTAIN STAGE


(c)SUMMER SONIC 09 All Rights Reserved

  〈THE SPECIALS〉と書かれた垂れ幕が設置されただけで大歓声が上がり、写メ隊がステージ前方に押し寄せる。待ちきれない観客がハンドクラップで煽るなか、SEに導かれてメンバーが登場した瞬間に会場全体が熱狂! “Do The Dog”のイントロのドラムがエフェクティヴに響き渡ると、筆者がいたモッシュ・ピットの外側も一斉にスカ・ダンス・タイムに突入する。ファースト・アルバムのジャケットを思い出させるスーツ姿でキメたメンバーたちもテリー・ホール以外は1曲目でほぼ上着を脱ぎ捨て、ネヴィル・ステイプルズに至ってはタンクトップ……というか、ランニング(裾ははみ出し気味)一丁の状態だ。パフォーマンスもその有様に見合うほどにエネルギッシュで、ネヴィルとリンヴァル・ゴールディングに至ってはステージ上を縦横無尽に駆け回り、しまいには袖まで走り込んで観客の目が届かないという事態に陥る始末(〈行きすぎ!〉と何度心のなかで叫んだことか)。セットリストは初作と2作目をほぼさらったキラーな構成だったが、特に1作目の曲は何をやっても怒号が上がり、“Monkey Man”や“Little Bitch”では〈アイアイア~♪〉〈ワン・ツー!!〉といった掛け声と共に踊りまくる観客が入り乱れ、ちょっとしたパニックを巻き起こしていた。ただひとり最後までスーツで通したテリーも「ちょっと待って、靴を脱ぐから」と裸足になり、“Little Bitch”“Nite Club”といったアッパー・チューンを連打。観客もシンガロング~コール&レスポンス~ハンドクラップ~スカ・ダンスとフルコースの盛り上がりで応え、“You're Wondering Now”“Ghost Town”でダビーにクールダウンしてステージは終了した。アンコールはなし。曲間ではかなり息が上がっていたし、メンバーがフルパワーでプレイしていたのがありありと感じられたので仕方がないとは思うが、あれほどのブーイングの嵐でトリを飾ったアクトも珍しいのでは? 翌日の大阪公演ではアンコールがあったらしいので、ちょっと悔しい。*土田

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介